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昨年末、米国ビジネススクール留学時代のクラスメートA君から久しぶりに連絡をもらった。メールのやり取りで聞いた感じだと平日は東京で会社勤め、週末は新潟で農家民宿を運営しつつ田舎暮らしをしているようなニュアンスだった。ずっと気になっていたので、この連休を使って行ってきた。
 

A君はコロナが来て本格的トレンドになりつつある、地方移住、地方創生に5年前から既に携わっていた。社起大にも地方創生に興味をお持ちの方は多いが、まさか自分の旧友が実行していたとは。A君は留学後、米国とオーストラリアを行き来し、米国系の大手投資銀行を渡り歩きながら、兼ねてよりの夢であった里山暮らしを実現していた。

しかし、ただの田舎暮らしではない。1年かけてリノベーションした古民家ロッジを起点に、農作ツーリズムを実現し、棚田を守る活動つまり耕作放棄された農耕地で米作りに励み、数百年単位で継承されてきた美田を後世に伝えようとしている。彼にとっては放置された農耕地も、棚田も、古民家も、そしてお爺さんお婆さんまでもが里山の財産とのこと。
 

今回、彼が継承する十日町の有名なブランド棚田(いずれも名前が付いている!)を視察させてもらったが、これはアートだ。ここで無農薬、湧き水でコシヒカリを作っている。春は山桜とともに、雨後には雲海がたなびき絶景である。

単身農村集落に居を移し、驚くほど見事な梁で構成される古民家を1年かけてリノベーションし、センスの良い仕立てに。裏山には橅(ブナ)の美しい原生林、そして周辺には多くの温泉も点在する魅力的な土地だ。民宿周囲には天然のハーブや、キノコ類も自然繁茂し、タヌキ、キツネ、ムササビ、キツツキといった面々も周辺住人だ。
 

しかし今回一番興味を掻き立てられたのは、美しい棚田以上にA君自身の生き方だ。まずは社起大のSECモデルで紐解いてみよう。

里山の良さを人一倍熟知し、また究極の棚田マニアとして国内外の棚田に通い詰め(自分らしさ)、里山の耕作放棄、人口減少問題や高齢化といった問題に取り組む(社会課題解決)。自分の強みである建設不動産、ファイナンスの知見を武器に都会のヒト、モノ、カネを里山に還流させ、逆に都会人の自己再生を促し、新機軸で里山と都会人のアセットマネジメントの手伝いをしようというビジネスモデルだ(ビジネス)。

彼によると、一見無関係に思えるファイナンスの発想や知識が里山再生に全て生かせるという。まさにA君にしかできないソーシャルミッションである。国内はおろか世界中での再現性もある。彼こそ紛れもない「社会起業家」だ。

そんな彼も、移住当初は集落ではいきなり信用を勝ち取ることはできなかったそうだが、年に一度の集落総会で「住民表を移しました」と発言した時にはどよめきが起こったそうだ。最後は覚悟だ。それを機に集落の方々との関係性が一気に変わったそうである。
 

12月末で会社を辞めて100%里山の再生に全力投球するという。既に協力者も集まり始め、ビジョンの実現に向けて確実に前進してゆくA君の成功を心から祈りたい。

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