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【6】マインドフルネス -2-

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松:では、マインドフルネスを実践してみましょう。実はマインドフルネスのやり方はいくつものパターンが有って唯一の正解とかは無いのですが、一つの例として。では、私のガイドに従って、実際にやってみましょう。

では、背筋を伸ばして座ってください。肩を楽にして、足を優しく床につけ、足の裏にあたる地面を感じてください。目は開けたまま一点を見るか、閉じるか、好きなほうにしてください。
では、肺を空っぽにすることに集中して呼吸をしてください。肺に入っている空気を、最後の最後まで押し出し、そうしたら今度は、肺が自然と空気を取り込むのに任せてください。
呼吸を意識して、息が入り、出ていくのを感じましょう。呼吸というものに初めて遭遇した、好奇心旺盛な科学者になったつもりで、よく観察してください。
肺が空っぽになると、またひとりでに満たされていくのを感じてください。
そうして数分間、呼吸に注意を払い、息が出入りするのを観察してみてください。

観察することに集中するのは、なかなか難しいと思います。それは、あなたの脳がとても話し上手だからです。脳はあらゆる話題を振って、あなたの注意をひき、中断させようとしてきます。
脳から振られる話題が浮かんでは消えていくのを、そのままにできるか、やってみてください。その話題は、後ろで流れているラジオのようなものです。そのラジオを消そうとは思わないでください。それは消すことができません。
意識はずっと、呼吸に向けておきます。ラジオは後ろで流したまま、呼吸に注意を向け続けてください。

時折、脳の妨害工作が成功することがあります。そんな時は、呼吸から注意がそれてしまうでしょう。それはごく当たり前の、自然なことです。脳に妨害されたと気づいたら、何があなたの意識をとらえたのかだけ心に留め、それから少しずつ意識を呼吸へと戻してください。
(10分程度、実際にやってみましょう。やり終えてから次を読み進めてください)

松:10分ほど経ちましたが、いかがでしたか。

武:結構、気がそれてしまいました。『今、何時なんだろう』とか『今日の感染者数は何人だったろう』とか。

松:気がそれるのは、ごく当たり前で自然なことなので大丈夫ですよ。その都度、呼吸に再度意識を向けることは出来ましたか。

武:はい、たぶん。難しかった時もありましたが。

松:良いですね。ちなみにこのエクササイズ、日常生活でどのように活かせそうでしょうか

武:うーん…気が散って集中できない時とかにやってみるとか。

松:素晴らしい。あくまでこのエクササイズはトレーニングなので、日常生活の中で脳が振ってくる話題をラジオのように受け流せるかが大事です。別に、毎回毎回、椅子に座ってじーっと呼吸に意識を向ける必要は有りません。普段の作業を行いながら、脳が話題を振ってきたことに気付いたらそれを認めてあげて、再度、作業に移ることが出来ればベストです。ただ、こうやって呼吸に意識を向けるエクササイズを継続的に行った方が日常生活での応用が効きやすいはずです。

武:なんか、集中力トレーニングみたいですね。

松:そのように捉えてもらっても良いですよ。価値に向かった行動に集中するためのトレーニングなので。ただし、先ほど10分ほど実践されて感じたでしょうが、脳からの話題でかなり気が散ったと思います。普段の生活内での脳の話題は、更に激しいです。特に気が動転している時ほど、脳の話題は目を引くものになるでしょう。継続的なトレーニングがどうしても必要になりますね。

武:なるほど。継続していくと、脳の話題…ラジオは消えるのでしょうか?

松:いいえ。たとえ禅の道を極めたとしても、それは出来ません。脳は常に様々な話題を振ってきます。けれども継続していくと、スルー力が格段に上がります。例えば自尊心が低い人は、脳から『お前はだめな人間だ』という話題に引き込まれてしまいますが、これもスルー力が上がってくると、「ああ、また脳が『お前はだめな人間だ』と言ってるな」と気付けるようになり、自尊心が損なわれなくなっていきます。ちなみにこの、自分が考えていることや感じていることに気付ける自分の存在を「観察する自己」と言ったり「メタ認知」と言ったりします。

武:奥深ぇー

松:大量な情報を一気に処理したので疲れましたかね。ちょっとここらで整理してみましょうか。

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