ヘヴィメタル(それがいい)
「根を詰めすぎるとよくないよ」
その忠告は正しいものだ。だけど詰めなければ隙間が空いて余計なものが入り込んでくる。お腹が空きすぎて痛くなったこと。友達が笑いながら裏切ったこと。古書の匂いが奪われたこと。3月の終わりに引き裂かれたこと。コーヒーカップがあふれたこと。邪魔者扱いされたこと。濁った現実と忌まわしい記憶が、呪いのように押し寄せてくることをとめられない。
「根を詰めるのはよくない」(それは何に対して……?)
その正しさは揺るがないものか……。
不意に戻ってきた反抗期に導かれて僕は根を詰めはじめる。
風に向かって歩きながらすべてのテーマは風になる。(余計なものはいない)
僕は忘れる。何も食べていないこと。友達がいなくなったこと。12月が終わったこと。コーヒーカップが空っぽになったこと。自分がこの世に存在しないこと。既に過去の話になったこと。
あなたにはわるいけど、きっといまはそれがいいことなんだ。
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