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アプリの庭(アンチ・バイオレンス)

「よーし並べ!」
 先生は深刻な顔をしていた。
「今から全員一人ずつビンタしていくぞ!」
 ただならぬ怒りを溜め込んでいる様子だ。それは僕らの日頃の態度に対してかはわからない。僕らは誰一人口を開かなかった。
「本当はな。一軒一軒親御さんに許しを得てからにするのが本筋だ」
 言い訳から入るのが先生の文体だ。それで保険をかけているつもりかもしれない。

「だけど、先生は忙しいんだ!
 だから、もうまとめてやるしかないんだ!
 時間がない! さあ行くぞ! お前からだ!」
 最初に僕が吹っ飛んだ。
 宣言通りに先生は順に従って鉄拳を振るっていった。
「痛いか? 俺はその何倍も痛いんだぞ!」
 その間、僕らは無抵抗のまま立っていた。それが先生と僕らの立場を何よりも鮮明に映すからだ。

「この痛みを忘れんな!」
 その時、上空からドローンが急降下して校庭に着陸した。中から武装した警官が降りてきて先生を取り押さえた。
「緊急逮捕!」
「無事に暴漢を確保しました」
 アプリで発信した映像がすぐに事件解決の決め手になった。
 もはや言い逃れはできない。

「私は教師だ。指導の邪魔をするな!」
「教師?」
 僕らは全員でそれを否定した。
「ふん。話は署で聞こう。よし、乗れ!」
 校庭に静寂が戻った。
 すべては信頼できるアプリのおかげだ。


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