日記を取り戻せ
「ただの映画じゃないか」
友人に指摘されてハッとした。
ずっと日記を書いているつもりだったのだ。
俯瞰的に総合的に考察して現代的なガバナンスと国際的な秩序に追随するという観点に重点を置きながら、広く包括的な行動理念に基づく解釈を適正に実践していたが、自覚は友人の率直な指摘に崩壊した。日記を書いているはずが、映画を作っていたとは我ながら驚いた。
「解散!」
監督をはじめとして、スタッフや大勢の役者を帰らせた。そうして自分を見つめてこそ、正しく日記を書けるだろう。
「すみませんけど……」
大物俳優のMだけはまだ残っていた。
「君の日記に出させてくれないか」
奇妙な役者魂がそこにあった。
「ギャラはいいから」
そう言って白い歯を見せた。
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