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【歌集】揚げ豆腐

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クジラうえ リクエストした 水族館 マダイが歌う スローバラード
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#小説

ブラック・ボックス

 内環まで行き過ぎて再び戻った。補修工事の網に覆われて建物が見えにくくなっていたのだ。ピ…

ロボモフ
1年前
2

盗まれたディナー

 一口だけちょうだいと姉ちゃんが近寄ってくる。あまりお腹は空いていないと言う。一口食べて…

ロボモフ
3年前
6

カルタ語の逆襲

「新しいカルタはできた?」 「それがまだ……」 「仕事は他にもたくさんあるのよ」 「どうし…

ロボモフ
3年前
12

凶悪不倫事件

 裁判員に選ばれた。事件は凶悪な連続不倫である。そう聞いただけで気が重かった。いや面倒く…

ロボモフ
3年前
11

夢のサイズ変更

 大きくなったら詩人になりたかった。コーヒーカップの中から妖精を引っ張り出す。未知の森に…

ロボモフ
3年前
11

銃身上の自由形式

「どこへ行く?」 「ちょっとコンビニまで」 「だめだ!」  大きな手にはね返されて部屋の中…

ロボモフ
3年前
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デュエル歌合戦

 サイド攻撃を仕掛けようと君は左サイドを駆け上がった。けれども、ゲームは右サイドを中心に組み立てられていた。10番と7番がテンポよくパスを回し幾度となくチャンスを生み出していた。敵もそれに応じて右サイドに守備の重点を置き始めた。そうなると攻撃は目に見えて渋滞を起こした。「よこせ!」君は大きく手を上げてアピールした。ピッチの中にサイドチェンジという言葉は存在しないようだった。向こうが陸ならば、こちらは海だ。君の前には敵のアタッカーが立っていた。 「どうしてマークする?」 「危

袋麺選挙スペシャル・インタビュー

「みなさんは袋麺と聞いて何を思い浮かべますか?」 「サッポロ一番みそラーメン」 「まあ、…

ロボモフ
3年前
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隣の宇宙人

 時々微かな音を聞いた。気配のようなものを感じることはあった。それ以外は常に意識の外にあ…

ロボモフ
3年前
12

素通りバス

「もう行ってしまったよ」  老人は言った。 「どうして……。ずっといたのに」 「いたのかね…

ロボモフ
4年前
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帽子人間

「君に似合っているよ」 「そんなことないよ」 「何言っているんだ。とてもよく似合ってるって…

ロボモフ
4年前
8

洗濯日和

 道に面した場所に広い庭があり洗濯物が干してあった。全身にまぶしい光をあびながら、シャツ…

ロボモフ
4年前
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青果売場

野菜売場の前に女が覆い被さっていた。 「ここの野菜よくないわ」 手に取っていた野菜をそう言…

ロボモフ
4年前
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ミラーパン

 君はカウンターにかけてパンを食べていた。硝子の向こう側にはもう一つのパン屋さんがあり、人々はトングを手に真剣な顔で好きなパンを選んでいた。迷わず次々とトレイにパンを載せていく人がいる。いつまで経っても選べずに、ただトングだけを持ったまま固まっている人がいる。迷いながら話しながらさまようトングを持った人々がいる。  ベルが鳴る。新しいパンが焼き上がり商品棚の中を新しい形で満たした。また新しい人たちが、狭い店内に押し寄せてきた。焼きたてのパンのよい香りが、硝子を突き抜けて君の