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ダイヤルって何!?~「ダイヤルM」

以前、ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」に関する記事を書いた。

そうしたら時を置かずして、そのリメイク作品がTVで放映されたではないか。分かっていたなら一緒に書けばよかったかしらん。
1998年公開の「ダイヤルM」。なお原題は”A Perfect Murder”である。これでは人入らないと担当者は思ったのだろうか。

「廻せ」を知っている身としては、どう演出するのかな、という観点での視聴だったのだが。。

ダイヤルは出てこないし、Mって何だ!?

タイトルの”ダイヤルM”。本編にはどこにも出てこない。そもそもダイヤルもない。プッシュホンだし、すでに携帯電話が普及しだしていたころなのだ。海外では、「廻せ」との関連性はどこまで押し出していたのだろう。

エロティック、増量中

80年代以降の映画は、必ずといっていいほどラブシーンがある。
「廻せ」にはキスシーン程度であったのが、本作では絡みのシーンが質量ともに増している。それがゆえに、人間の愛憎を引き立たせようとしているのだと思う。

全員、悪人

「廻せ」のほうも、みんな後ろ暗いところを持つものばかりではあったのだが、本作はその振り切り具合がすごい。
最終的にパルトロー演じる夫人が生き残るのだが、観ている方からしても「ああ、良かったね!」とは手放しでは言い難い。
「廻せ」でもグレース・ケリー演じる夫人は助かるわけだが、不倫という過ちは犯しつつ策を弄する夫のせいか、グレースのあふれる気品のせいか、ハッピーエンド感が強かったと思うのだ。

キャラクターの作りこみはどこまでが適度か

「廻せ」は、どんでん返しはあるものの、ある程度人物ごとに与えられた役割が明快だった。主人公たる夫人、被害者づらの悪役である夫、夫人の共犯でありながら狂言回しの不倫相手、解決役の警官。それが本作では、まず警官が出てこないので、残る3人を中心にして展開していく。
また、殺人(未遂)の実行犯の関係もまた違っている。それが3人の関係性をより緻密に仕立てていることの一助ともなっているのだが。

最後は好みの問題ではあるけれど

本作は「廻せ」に比べサスペンス性も高く、なかなかスリリングな印象を受けた。作中の雰囲気も、ああ90年代終わりってこんな感じだったかな、と思わせるものでもある。だから、当時のリメイクとしては上々の出来であったことだろう。
でも。と、言いたい。
でも「廻せ」の方が、よかったなぁ。
こう思うのは懐古趣味なのか。オリジナル至上主義に堕しているからなのか。

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