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天職について考える~「カラヴァッジョ《聖マタイの召命》」

ルネサンスといえば、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの名前があがる。バロックというとレンブラントやルーベンス、ベラスケスもその名前があがるだろう。
その端境期に活躍した一人の画家がいる。彼の絵は一度見たら強烈な印象を見たものに刻み込む。彼の以前以後で美術史は大きく分けられるくらいだ。彼の名はカラヴァッジョ。神と悪魔が同居したような男でもある。

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上のピンボケな写真は、以前イタリアに行った際に私が撮影したもの。
今回読んだ書籍は、この絵を取り上げたものである。この絵は「聖マタイの召命」という画題。人類が誇る傑作だ。

福音書の書記としてもその名を残す聖マタイ。元はレヴィと名乗る、徴税人であった。
彼は通りかかったイエスから、「私についてきなさい」と声を掛けられ、すっくと立ちあがり、仕事を放り出してついて行ってしまう。この絵は今まさにレヴィが立ち上がろうとしている直前の場面だ。

召命とは、英語でCalling。神からの呼びかけということ。転じてこれは天職とも訳される。

なかなか自分にあう職に就くことは難しい。ましてや生き方なんて。
それで天職ならぬ転職を繰り返す人も、今では珍しくなくなっている。
そんな私たちに対し、この絵から学ぶことがあると著者は書いている。

たまたま選んだにすぎないものでも、与えられた仕事というのはひとつの運命にほかなりません。それが神の導きだと思って精を出すことが大切です。ひたすらそれを続けることによって、与えられた仕事は実際に転職となり、神の意志、つまり運命に沿うものになるのです。

これはこれで、一つの考えではある。
しかしながら、神の意志云々は差し置いても、それなりに社会で働いていると当たらずとも遠からずと思うこともある。

このようないささか説教じみている件もあるが、キリスト教の基礎も浚うことができる、カラヴァッジョ研究の第一人者による著書。読みごたえは十分であった。

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