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敵味方二元論が揺らいでくる~「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ

年末年始、まとまった時間があったので、意を決して視聴してみたのがこちらの超大作。
3部作合わせて9時間半、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズである。

こういうファンタジーものはあまり見たことがないのだが、どことなくスターウォーズに通じるという印象。
第一部が2001年公開ということで、CGと特撮とが最もバランスよかった頃の技術的に最高傑作という点で間違いないだろう。実に”ホンモノ”っぽいのだ。

詳細の解説はいつものとおりに、映画評論家の町山氏より。

古今東西の神話を踏まえているというのはその通りと思うが、やはりトールキンがこれを著した時代背景が色濃く反映されている気がしてならない。すなわち二度の世界大戦である。

中世の騎士道は洋の東西こそ違えど、”やあやあ、我こそは!”の時代である。それをここまで苛烈な世界観に仕立てている裏には、やはり20世紀から本格化した総動員体制による戦争体験があったのではないだろうか。
その延長でこじつけてみれば、指輪は原子力の暗喩にも読み取れる気もするが、それはさすがに穿ちすぎか。

それにしても、敵対するオークの軍勢の統制のとれていることよ。一糸乱れぬ行進と隊形には、高度な知性と心性さえ感じさせる。サウロンが邪悪に描かれているから正邪反転しようもないが、ともすればどっちが正義かわからない。彼らは彼らの生活や理屈があるのではないか、と思えてしまう。

そう思うと、異形のものということだけで、斬り捨ててしまうことを是とする考えは、もはや21世紀の価値観からすると乖離してきているのではないだろうか。少なくともアタマではそう理解が進みつつあるとは思うのだが。


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