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ケーリーはいつもケーリー~「断崖」

アメリカン・フィルム・インスティチュートが1999年に「映画スターベスト100」というものを選定している。
映画スターとは、1950年以前にデビューしたか1950年以降にデビューしたが死去している俳優とのこと。
男優部門で2位にランキングされているのが、ケーリー・グラント。
端正な顔立ちで色気もあわせもつ正統派の映画スターだ。
そんな彼が、いわゆる”ダメ男”を演じながら、サスペンスフルな仕上がりとなっているのが、1941年公開の「断崖」である。

それにしても、このケーリー・グラント(の演じる役)は本当にダメな男だ。でも、ただダメ男なだけではいけない。女性を虜にするような魅力が必要なのだ。
その点、ケーリーはうってつけである。天真爛漫で、どこかウブな印象を受ける。

彼の不思議な点は、どの作品を観てもいつもケーリーなのだ。それでいながらうまく作品ごとに求められる役柄に染まっている。演じるというか天性のキャラクターなのか。

このケーリーのおかげで、(個人的には)影の薄くなっているのがジョーン・フォンテインである。彼女は本作でアカデミー主演女優賞を受賞するのだが、前作「レベッカ」の方が迫真の演技を見せていたようにも思う。
彼女の演じる主人公、最後の選択については「それでいいの!?」という感じで、賛否の分かれるところのようだ。

ストーリーとしては、ヒッチコックお得意のエンディングでのどんでん返しのパターン。そういう意味では、原題の”Suspicion”よりも「断崖」の邦題の方がそのパターンに一役買っているとも言えようか。
今となっては特に真新しい演出もないとは思うが、ハリウッド初期の佳作と言うに過言ではない作品であろう。

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