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美術せんにんの記録

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#日本美術

玉堂の作り出した原風景~山種美術館「川合玉堂」

玉堂の作り出した原風景~山種美術館「川合玉堂」



川合玉堂のまなざしは優しい。
このように言われることが多い。その作品も、曰く日本の原風景、曰く失われたニッポン等。
しかし、日本の原風景とはこのように穏やかなものなのだろうか。

たとえばこちら「早乙女」という作品。
ちょうど今くらいの時期だろうか。乙女たちが田植えに励んでいる。ずっと腰をかがめているから伸びをしているところだ。
彼女たちのおしゃべりが聞こえてきそうだ。唄なども歌っているのかも

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ある意味で美人画?~山種美術館「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」

ある意味で美人画?~山種美術館「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」

秋晴れに恵まれたこの週末、一匹の猫に会いに山種美術館へ足を運んだ。

「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」展である。
(掲載しているチラシは、コロナ前に配られていたものなので会期が異なっている)
目玉はやはり、この「班猫」。山種美術館の看板ネコとも言えるほどの名品となっている。

背を見せつつ、首を曲げてこちらを見上げる目は、媚びているようにも見える。その見上げるような肢体が、しなを作ってなん

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【図録レビュ】2007.4.21東京藝術大学大学美術館「パリへー洋画家たちの100年の夢」

【図録レビュ】2007.4.21東京藝術大学大学美術館「パリへー洋画家たちの100年の夢」

日本人が描いた絵は日本画、西洋人が描いた絵は西洋画。
では、日本人が西洋画を模して描いた絵はどちらだろう。
中学高校では、油絵と称される絵。かつては洋画と呼ばれていた。
明治維新より、多くの志ある者たちがパリを目指した。
そんな者たちの遺した精華を紹介する展覧会が、
今回の「パリへ -洋画家たちの100年の夢」である。

文明開化の当時、パリもまさに印象派が花咲こうとしていた。
日本の若き画家たち

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【図録レビュ】2007.9.8サントリー美術館「BIOMBO/屏風 日本の美」

【図録レビュ】2007.9.8サントリー美術館「BIOMBO/屏風 日本の美」

展覧会に行ってとても満足感を味わったり、気に行ったりした時、図録を買って帰ることがある。しかし、買っただけで満足してしまって家で見返すことはほとんどなかったりするものでもある。
美術館に行けない日々が続いている今、家にある図録を読み返す良い機会ではないかということで、行った当時に思いを馳せながら、今見て心に残った点を紹介していってみたい。

今回は、
2007.9.8に行ったサントリー美術館「BI

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