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【図録レビュ】2007.9.8サントリー美術館「BIOMBO/屏風 日本の美」

展覧会に行ってとても満足感を味わったり、気に行ったりした時、図録を買って帰ることがある。しかし、買っただけで満足してしまって家で見返すことはほとんどなかったりするものでもある。
美術館に行けない日々が続いている今、家にある図録を読み返す良い機会ではないかということで、行った当時に思いを馳せながら、今見て心に残った点を紹介していってみたい。

今回は、
2007.9.8に行ったサントリー美術館「BIOMBO/屏風 日本の美」展である。


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サントリー美術館は2007.3.30、六本木ヒルズにリニューアルオープンしている。この展覧会も一連の開館記念シリーズの一つであった。開館を飾るにふさわしく、とても重層的で豪華な内容だったことを覚えている。

展覧会名である”BIOMBO”とは屏風のこと。16世紀の桃山時代頃にポルトガルやスペインを通じて西洋の文物に出会った日本人は、その様子を屏風に描いている。またそれを海外に送り出してもいた。それを向こうでは、BIOMBOと呼んでいたという。

湿潤な風土の日本にあっては、古くより建物は通風性のよい開放的な設えをしていた。そこにあって、自由に間仕切りに使える屏風は日用品としても便利で実に身近なものであったろう。天武天皇の時代にはすでに使われていた記録があるというから、歴史は1300年以上にもなるわけだ。その日用品に絵や書を描くというのは何とも洒落ているではないか。

さて、この展覧会の図録は、少し変わっていて”箱入り”となっている。

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屏風の展覧会だけあって、この図録は横開き。そのまま本棚に入れると出っ張ってしまうから、縦にしまいたくなる。ところがそれだと背が上か下になるためしなってしまい立ちにくい。そこでこの箱が役に立つというわけだ。考えているなー。

改めて中を見返して、いくつか目に留まった作品がある。

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日月山水図屏風(右隻)」(16世紀)
この極端なまでにデフォルメされた山、ぬらぬらとたゆたっている浪、一度目にしたら忘れられない描写である。これを見て思い出されるのは、この400年後の巨匠が描いたこの作品だ。

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加山又造「春秋波濤」(1986)
こちらの展覧会図録によれば、加山は先の日月山水図屏風を見て次のように感じたという。

太陽と月、蓬莱山と波濤、そしてそれを彩る自然が作り出す、神秘的な宇宙感に感動を覚えた。

そうして、その”宇宙感”を持てる技法で描き出し、この「春秋波濤」に結実したのだ。

もう一つ、この展覧会の作品で気になったのがこちら。

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武蔵野図屏風(右隻)」(17世紀)
私な好きなテーマである”武蔵野”。ススキと月とお決まりのモチーフが並ぶ。17世紀ともなれば当初の意味は希薄化し、装飾的な色合いが強くなっている。
それでもただ風情があるというだけでなく、伊勢物語のような悲哀も幾ばくかは感ぜられたいとも思う。

日本ならではの屏風絵というジャンル。
豪華でかつ繊細、情緒的な作品も堪能できるという、とても素晴らしい展覧会であった。

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