見出し画像

プリティ・ウィングス/マックスウェル Pretty Wings / Maxwell

90年代後半から00年代にかけて俺の音楽体験は暗黒時代を迎えていたが、それにはいくつか理由があった。

1.仕事が忙しかった。転勤もあったし。

2.子育てが忙しかった。子供はすぐ大きくなってしまうので、なるべく時間を共有したかった。

3.会社を辞めて起業した。
これは大きかった。
とても音楽を聴いている暇は無かった。
自分が上手に世の中を渡っていけるタイプの人間でないことは起業して3か月で理解できた。
毎日死ぬ思いで仕事をした。
とても苦しい時期だった。

自分で会社を興して少ししてからiPhoneが発表された。
当時の機種「3G」は日本発売が無く、「3GS」から日本発売された。
当時docomoと契約していた俺は、すかさずソフトバンクに切り替え、手に入れたのだった。
今のiPhoneと違い、背面がカーブしていて手になじむ素晴らしいデザインだった。
随所にスティーヴ・ジョブズの意向がデザインとして、機能として落とし込まれていた。
アプリをインストールすることで携帯電話機が様々なツールに変化するコンセプトも素晴らしく、まさに世の中を変える発明だった。

電話、メールに加えてカメラ機能、メモ帳、音声録音など取材や原稿制作にフル活用した。仕事にはiPhoneひとつ持っていけばいいとまで思うようになった。
しかし俺が一番活用したのは実は音楽プレイヤーだった。
これは俺のような音楽好きにはたまらなかった。
常にポケットに何千曲も持って歩けるのだ。
持っているだけでいいのだ。
満足感と安心感があるのだ。
これだけで物欲が満たされるのだ。

まずは自分のレコード、CDコレクションの中から重要なものをチョイスしてMP3にしてPCのiTunesにリッピング。(PCに音声ファイルを取り込むことをこう言った)その音楽をプレイリストであれこれ弄り回すのがとにかく楽しかったが、そのうちiTunes Storeのサービスが開始され、家にいながらネット上で自由に音楽が買えるようになった。
これもショッキングだった。
何度目かの黒船到来だ。
この10年間ぐらいが音楽市場が最も激変した時期なのではないかと思う。
その波を思い切り頭からかぶってしまった。
テクノロジーがライフスタイルを変える最もわかりやすい例だと思う。

この後3Gsから4s、6、SE、SE2、13miniへと続く俺の華麗なる安iPhone遍歴の始まりである。

息子と一緒に当時開業したばかりの「ららぽ~と」へ行き、タワーレコードの視聴機で聴いたCDの中から一番良かったこのCDを買って、さっそくiPhoneに入れた。

ネオ・ソウルのせつなくシルキーな歌声が当時の重く苦しかった生活を癒してくれた。



この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?