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恋のダイヤル6700/フィンガー5 Koi No Dial 6700 / Finger 5

もうじき16歳の誕生日を迎えるという高校1年生の2月の寒い日、
俺は親戚のおじさんからもらった銀色のポルシェのジャンパーを着込んで、
家の近所の駅前の公衆電話からF原さんに電話して付き合ってほしいと告白した。
すでにバンドを一緒にやっていて仲良くしていたとはいえ、付き合うとなれば話は別だ。

指の震えを抑えつつ、俺はダイヤル回したよ。
君のテレホンナンバー〇〇〇〇
うわぉー!
まさにこの曲の気分。

「はい、F原です」
ヤバい。
お父さんじゃん!
怖い。

「あ、あの、えーと、あの、あ、N高で同級生の俺君と言います。K美さんいますか?」
「もしもし」
「あ、K美さん?俺君です。
あ、あの、えーと、あー、もっと早く言いたかったんだけど、ズルズル遅くなっちゃって、あの、えー、えー、俺と付き合ってください!」
「・・・・・」
(しまった!やっぱりやめときゃよかった。学年のマドンナに告るなんて身の程知らずもいいとこだ。)
「うーん、ちょっとすぐには返事できないから、明日まで待って。また明日電話して」
「はい」ガチャ。(俺が電話を切る音)
電話ボックスから速攻で逃げ出した。
(なんで俺電話なんかしちゃったんだろう。明日学校なんか行けねーよ)

次の日の夜、ダメだとは思いながらも恐る恐る電話した。

「はい、F原です」
うわ、またお父さんじゃん!

「あ、あの、えーと、あの、あ、昨日も電話したN高で同級生の俺君です。こんばんは。K美さんいますか?」
「あ、昨日の俺君ね、ちょっと待ってね」
今日は意外と優しい声だった。

「もしもし、俺君?昨日の電話の話、OKだよ。」
「へ?」
「いいよ」
向こうも家族がそばにいるので話しにくいのか、はっきりと言ってくれない。
「うそ?ほんと?うそ?え?ほんとに?いいの?付き合ってくれる?」
「うん」
(やったー!やったやったやったやったやったやったやったやったー!)
天にも昇る気持ちだった。
「ありがとう!
じゃあまた今度学校で!」

次の日学校に行ったら、全然関係ない同級生から肩を叩かれて
「おい、俺君!やったな!F原さんと付き合うんだって?」
「えええええええええ?
なんでお前が知ってんの?」
「学年中がお前とF原さんの話で持ちきりだぞ!」
「やべええええええ、そんなことになってんのか」
「どうももう一人告ってたヤツがいるらしいけどそいつは断られたんだってさ」
そうか、そいつから話がダダ漏れしてんだな?
別に聞きたくないことまで言ってくる。

いやはやそんなことでお付き合いすることになったんだが、後年、なぜ俺と付き合うことにしたのか聞いてみたら、
「KISSの曲をギターで弾けたから。
その時はまさかこんなに長い付き合いになるとは夢にも思わなかった」だって。

その言葉に熨斗つけてそっくりそのままお返しします。


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