日本とヨーロッパのアカデミックキャリアについて考えてみた
最近知った、日本のアカデミックキャリア、ばりきつくない?って話。
twitterで教えてもらったことや調べてわかった日本のアカデミックキャリアについて、ヨーロッパでのアカデミックキャリアの状況と比較しながらまとめてみようと思います。
1.日本のアカデミックキャリア事情
はじまりは、日本の大学教授の給与に関するニュース。
東京都立大学准教授の小町守さんの助教から准教授までの給与推移が書いてあり、助教時の税引き前の年収は初年度は450万円で3年目は600万円程度らしいです。助教は大学での一番初めのポストらしいので、意外ともらえるじゃん、という印象でした。
別のサイトでも助教の平均給与は400〜600万円とあり、日本の助教ポストの給与は、ヨーロッパのポスドクポストの給与とほぼ同じと考えて良さそうです。twitter見てると、日本にいる研究者のネガティブツイートよく見るので(失礼)、金銭的にはそれほど問題なさそうなのにな〜、と思ってました。
ちなみに、大学でのポストの進み方は、「助教(Research Associate, Assistant Professor)」→「准教授(Associate Professor)」→「教授」らしいです。
この記事に関連するツイートを見ていると、日本のアカデミックキャリアの本当の問題は給与ではなく、PhD後のポストの少なさだとわかりました。どうも、社会科学系分野ではPhD後の現実的な選択肢って学振PDと非常勤講師しかないらしい、、、これは選択肢が少なすぎて、やばくないか、という話です。
ちょうどヨーロッパで第二ポスドクを探していた所だったので、この事実には結構衝撃を受けました。
ヨーロッパは結構ポスドクポストあるし、そういう意味ではありがたいなぁ、なんて思ってたんですが、日本とヨーロッパ比べるの単位違くないか、ということに気付き、、、笑
PhD後、どこか別の国に移動することが前提として考えられてるし、僕もそう思って準備していたので、ヨーロッパを1単位として考えることを不思議に思っていませんでした。と、改めて今まで見てきたヨーロッパでのポスドク事情を思い返してみると、意外とヨーロッパ(特に南欧)も国レベルでは日本と似たような状況かも。
2.ヨーロッパのアカデミックキャリア事情
問題1:国際移動が前提
まず、僕がPhDと第一ポスドクをしているスペイン。
若手向けの研究費はスペイン政府が出しているもの、カタルーニャ政府(多分他の地域の政府も出しているはず)やスペインの銀行が出してる研究費があります。これに加えて、ミッド・シニアキャリアの研究者が獲得した研究費からお給料をもらう形のポスドクポストがあります。
確かに選択肢の数としては、日本より多いかもしれませんが、PhDを持った人の数を考えると、それほど実情は変わらないと感じてます。他のヨーロッパの国も自分が調べた感じだとスペインの事情とそれほど大差ないと思います。つまり、国単位ではPhD後のキャリアは日本よりは少しいいかな、くらいでそれほど変わらないという感じです。
そんな国単位の問題を少しばかり解決しているのは、「PhD取った後は別の国に行くっしょ?」という前提だと思います。
かなりドメスティックな僕の研究所でもPhDとポスドクを同じ国で行った人はほぼいません。なんなら、マスター、PhD、ポスドクを全て別の国で行った人が多いくらい。ポストがない国からポストがある国へ流れていく感じですね。まあ、ヨーロッパは大体どこでも飛行機2時間ちょいで行けちゃうのでこういうことが可能なのかもしれません。
Natureにも"Why you should move country"という煽り記事がでちゃうくらい、そういう前提が強くあると思います。この記事には結構批判が集まり、その多くは「アカデミアでの成功モデルは、独身が前提になっている」というものでした。
確かに、僕の同僚でもパートナーを理由に国に留まる決断をした人も多くいます。パートナーが一般企業で職を持っていたり、既に家を買っていたりなどすると、そうそう簡単に移動できませんよね。僕の場合は、完全に妻の協力によって成り立っています。ありがたや。大感謝。
問題2:ポスドクポストは割とあるが、、、
上に書いた通り、ポスドクポスト自体はヨーロッパには結構あります。
これの一つの理由は独立系の研究所が結構あり、そういう研究所がポスドクポストを応募していることがあると思います。なので、大学ポストが少なくてもこういう研究所のポストがあることが日本の社会科学の事情と異なることだと思います。
ただ、この研究所でのポストの問題は、permanent contractが取れるかわからないし、取れてもかなーり時間がかかることです。ある研究所はほぼpermanent contractを出さないし、別の研究所では40歳中盤くらいまでpermanent contractがもらえない例もあります。しかもこの人はERCグラントを取るなど研究者として実績をあげてるのに!
ですので、ポスドクを10数年続けていくことはある程度「普通」だし、それも数カ国移らなくてはならないことも多々あるわけです。
------
アカデミアのキャリアは不確実だ、ポストがない、制度が不十分だ、などアカデミアのキャリアについて色々ネガティブなことは聞きますし、今見てきたように、それはある程度確かなことだと思います。
それらは改善されることが好ましいかと思いますが、PhDを終えた時点で、こういった制度を改善する立場に回ることは難しいでしょう。
なので個人的には、そういった不確実な現状を前提に、どのようにすればポスドクポストを取れるか、アカデミアで活躍できるかを戦略的に考えた方が良いエネルギーの使い方かなと思ってます。
こうした問題意識を抱えた人がキャリアを進めていき、少しずつ次世代の研究環境を良いものにできればなと、それが一番現実的な向き合い方じゃないかなと今は考えてます。
みなさんいかがでしょうか?ご意見・ご感想あればぜひ教えていただければと思います。
サポートしていただいたお金は、研究費に使わせていただきます!