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孫とじぃじの奮闘記【1】

あれは3年前。
妻の実家での出来事。

2歳の孫のハルが、つかまり立ちしている1歳の孫ユウキを手で押して転倒させた。ユウキは驚いたのと怖かったのもあり泣き叫んだ。怪我はない。たが、これまでも似たような状況が何度もあり、その度に、携わった家族が向き合ってハルに話をしてはいたが、ハルは頑固。

誰が何と言おうと謝らない。
『ごめんなさい』が言えない。

今日しかないと思い、洗面所に連れて行き、扉を閉め声を荒げず瞳を見据え
「ハルが押したからユウキは転んだ。ユウキは怖い思いをした」という内容を訥々と私は伝える。
そして、ハルの左肩を一度だけ素早く強く揺さぶった。

ユウキが感じた驚いた感覚や、怖かった感覚には届かない程度
だが知って欲しかった

兄弟喧嘩は良いのだ
お互いに心や体の痛みを確かめ合う
そうやって大きくなる
私もそうであったように

だが

「人がされて嫌な事」
「自分がされて嫌な事」

それは違う
だから体感して欲しかった

ハルは泣いた
それはもう いつもより
大粒で たくさんの涙

ボロボロ涙で泣きながら
トボトボ歩いて
私の胸の中へ入ってきた

怖かったのもあるだろう
だが それ以上に
自分がした事の意味を
その小さい身体で
たしかに理解したのだ

ハルの髪と背中を撫でながら
「ユウキにごめんなさいできる?」
と私は静かに問う

ハルは泣きじゃくりながら
小さく小さく何度も何度も頷く

「じゃあ行こう」
そう声をかけ
洗面所の扉を開け
手を繋ぎユウキの所へ

ユウキの顔を見てさらに涙

ハルの耳元で
小声で背中を押すと
私は洗面所に戻り様子を伺う

すると更なる大泣き

その刹那、大きな声で
生まれてはじめて言葉にできた
『ごめんなさい』

それはまるで
今まで言わずに足元に
散らばっていた『ごめんなさい』を
その小さな手で一生懸命に拾い集めて
言葉にしたかのような

心からの『ごめんなさい』

その光景に熱いものが込み上げ
私は洗面所の扉を閉める

ハルにとって
家族にとって
なんと得難き日

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