職場におけるストレスチェックとは①

あなたは、職場でストレスチェックを受けたことがありますか?

労働安全衛生法の改正により2015年(平成27年)12月1日以降、従業員50名以上の事業所においては、年に1回以上、ストレスチェックを行う事が義務化されました。2016年11月末日までに第1回を終えるということで、多くの企業や事業体が対応に奔走された事でしょう。

厚生労働省の研究班が試行錯誤して作り上げた57項目ないし80項目の質問を行なっていることが通常です。2万人以上のデータを元に、高ストレス者の閾値が設定されておりますが、企業によっては、追加の項目を追加しているところもあることでしょう。

ストレスチェックの目的は、治療で追いつかない現状に対して、予防しようというものです。あくまで予防、という趣旨にしたがって、メンタルヘルス不調・疾患について診断パワーのある質問項目は、あえて、57項目/80項目から外されています。

現在の設計では、概ね10%程度の方が、高ストレス者と判定されるよう、閾値設定がなされています。

さて、ストレスチェック制度には、たくさんの課題がありますが(順次、取り上げてまいります)、最大の問題点は何でしょうか。

私は、従業員50名以上の事業所のみが、義務化されている、という点だと思います。従業員50名以上の会社ではありません。例えば、従業員1000名の会社であっても、全国展開しており、どの事業所も従業員が50名以下であれば、実施する義務は生じません。この50名というのは、産業医の配置義務とも重なってくるので、知っておくべき数字です。

そして、日本の労働者の70%が中小企業に所属しているとされています(経産省調べ)。また、中小企業庁のデータから、2016年において小規模企業を除いた中小企業に所属する労働者約2034万人を当該企業数約53万で割ると、全国平均38名となります。明らかに50名未満ですよね。したがって、日本の労働者の過半数がストレスチェック制度について、目にも耳にも、したことがないという状態が生じてしまっているのです。

そもそも、大企業は中小企業や小規模企業よりも福利厚生が整っているのですから、よりアンフェア(不公平)な状況の格差が広がると言えるでしょう。

私は、誰もがフェアにメンタルヘルスに関するサポートを受けられる社会を実現すべきだと思っております。

オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」を提供する株式会社313では、ストレスチェックも提供しています。株式会社313では、これまで、小規模企業や中小企業が多数加入している、各地域の商工会に対して、商工会の会員であれば企業規模によらず誰でもストレスチェックを受けられるような取り組みをしてはどうかとの提案も行ってきたのですが、「メンタルヘルスといっても、見えないし分からない」「何か問題が生じてから、対応してもらいたい」とご理解を得られませんでした。私達の力不足なのかもしれませんが、メタボ健診やがん検診と同じように、メンタルヘルスに対しても意識を高め、予防していく取り組みが必要です。

私が精神科医を志したのは、1996年、19歳の時でした。その時から、予防、こそがもっとも大切だと思っています。それから、25年、四半世紀が経った今でも、メンタルヘルス不調・疾患を予防していくことは、まだ社会のごく一部にしか浸透していません。

サービスを立ち上げる、より良いものにする、それだけでは全く不十分です。感度の高い人や企業が使うだけです。誰もがメンタルヘルスについて語れる社会を実現する、そのためのチャレンジを続けていきたいと思います。


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