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置かれた場所であばれる強さ

先月のことだが、推しnoteクリエイターの【潮井エムコ】さんが、初エッセイ本『置かれた場所であばれたい』を出版された。

彼女は、note界における僕の師匠(と勝手に思っている)だ。彼女のエッセイを読んでnoteを知り、彼女に感化されて自分もnoteを始めたので、あながち誇張ではないことはおわかりいただけるだろう。誕生日も同じで(4月1日)、シンパシーまでもがパッシパシである。

noteクリエイター紹介の記事でも、シリーズのトップバッターを飾らせていただいた。それほど、潮井エムコとは僕にとって特別な存在なのである。

※ちなみに、僕のフォロー欄を遡ってみると、note公式の次にフォローしていることがわかる。


そんなわけで、さっそくAmazonでポチッた僕は、尻を振り回しながら書籍の到着を待ちわびた。

発売日は2024年1月19日。本来なら発売日当日に手元に届いてほしいものだが、生憎ここは雪と氷に支配された極寒の冷地こと冬の北海道。路面状況もかなり悪かったのだろう、届いたのは3日後の1月22日だった。運送業者さん、お疲れさまです。

置かあばwithアバレンジャー


ただ、めでたいことに、この日はエムコJr.がご生誕されたそうで、それならこの日に届いたことはむしろラッキーだったとすら思える。ご出産おめでとうございます。

そして、高級ウイスキーを毎日チビチビ飲むように少しずつ読み進め、本日ようやっと1巡目を読了したので、僭越せんえつながら感想文をしたためようと筆を執った次第である。

エムコさんのエッセイは、大きく2パターンに分かれている。

一つは、笑いを抑えきれないほど面白可笑しいエッセイ。
努力の方向が天才的な『夏休みの宿題』や『200円の使い道』、エムコさんの必死さが伝わってくる『義父とメダカ』や『4月のママチャリロードレース』、結末がわかっているのに笑ってしまう『巫女のアルバイト』など、どれも彼女の人柄が垣間見える素敵な作品たちである。さすが【パワフル☆ラフメイカー】の二つ名は伊達ではない。

もう一つは、読み終わった後に心がじんわり沁みるようなエッセイ。
友人との絆をひしひしと感じられる『先生との契約』や『結婚式の招待状』、苦かった幼少期から今につながっていく『4歳の家出』や『パステルブルーの指先』、当たり前と思っていたことを考えさせられる『せんせいって、だれのこと』など、前者とは打って変わって所謂いわゆる「エモい」仕上がりに。こちらもまた、キラキラと輝く素晴らしい文章に満ちていて、ほっこりと温かい気持ちになる。

ここで紹介しきれなかったものも含め、本書に掲載されたすべてのエッセイは、どれも感動するものだと断言できる。なんなら、ポケットマネーで何冊か買って、友人や知り合いに配って歩きたいくらいだ。それほどこの『置かれた場所であばれたい』には、人の心に響くものがある。

思うに、エムコさんのすごいところは、自己理解と感受性の高さにあるのではないだろうか。

まず、自己理解。
自分のことを(良いところも悪いところも)よくわかっていて、それが各エッセイの物語の基盤となっている。読み手も「ああ、エムコさんってこういう人なんだな」と理解して読めるようになっているので、潮井エムコというキャラクターが生き生きとエッセイ内をあばれ回ることができる。この前提がなければエッセイとしての旨味は格段に薄れるので、自分の人となりを把握して伝えるという能力はかなり高いんじゃないかなと思う。
あと、単純に幼少期の記憶の鮮明さにびっくり。

そして、感受性。
いくら記憶力が良くてたくさんの経験をしていたとしても、感受性が低ければ面白いエッセイにはならない。たとえば、短大時代の思い出が「ピアノが苦手で大変だった」だけでは『庭木のピアノ』や『私はゴリラ』のような傑作は生まれなかっただろう。「ピアノが苦手で大変だった」につながる、あるいはそこから広がる数々のエピソードを上手いこと取捨選択し、エッセイの魅力を余すことなく引き出している。毎日をのほほんと思考停止で生きていては、決してできない所業である。
また、個人的には「ブリブリ」や「ギャイギャイ」といったオノマトペのセンスも秀逸だと思っている。

えらく長い文章になってしまったが、僕が今さら言うまでもなく、彼女は素晴らしいエッセイストである。

エッセイとは、自己の経験や思考に基づいたノンフィクションだと思っている。
では、エッセイストは特別な経験をしてきた者にしかなれないのだろうか。

そんなことはない。まったく障害のない平坦な道を進んできた人など、この世にもあの世にもどこにもいないからだ。その人にはその人のドラマが無数に転がっている。それを拾い、磨き、放つことをするかしないかの違いだと思う。

本書のタイトルだって『置かれた場所であばれたい』だ。「自分で選んでこの場所にいるわけではないけれど、自分らしく生きていきたい」というエムコさんの信念が、この12文字に集約されているのではないだろうか。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。

置かれた場所であばれる強さ。それを持っている彼女の遠い後ろ姿を追いかけながら、僕のエッセイストへの道のりは続く。


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