黒良 龍太

激甚化する気象現象におののきつつも、過去の顕著な気象現象にも興味があり、また日々の気象…

黒良 龍太

激甚化する気象現象におののきつつも、過去の顕著な気象現象にも興味があり、また日々の気象も全く同じものはない。防災と気象現象の理解を深めるために顕著事例の天気図を作成・解析している。この中で得た現象の記録、知見や作成したコードを記事にする。気象を勉強する方々の参考になればと思う。

マガジン

  • 天気図の世界

    天気図に関する話題を取り上げ、Pythonを利用した天気図の作成方法についても紹介します。気象にある程度知識があり、事例解析などに興味がある方や、天気図を作成したい方々を対象としています。気象学を学んでいるような学生の方々に読んでいただけると嬉しいです。

最近の記事

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「天気図の世界」について

マガジン「天気図の世界」のコンテンツは、様々な種類の天気図の紹介やMetPyを利用した天気図作成コードの解説、豪雨などの事例解析などからなっています。コードにのみ関心がある方、事例解析にのみ関心がある方などもいらっしゃると思います。そこで、コンテンツの分類と各コンテンツの簡単な紹介をします。気になったコンテンツを読んでいただければ幸いです。今後も、コンテンツを増やしていきます。 紹介しているコードは、MetPy Vesion 1を利用しています。 最初にある天気図は、戦後

    • 速報:2024年4月ドバイの大雨事例(2)

      上層の状況や安定度を調べる前に、ドバイ国際空港を通過した5つの雷を伴った雲域の衛星画像を確認しました。UAE東部の西側またはすぐ近くで対流雲が次々に発生、発達した様子が見られました。これらの雲域の特徴についてまとめます。 この記事の衛星画像(赤外画像)は、EUMETSATのデータを利用しています。 5つの雷を伴った対流雲域の衛星画像の動画ドバイ国際空港に雷雨をもたらせた5つの雲域について、それぞれ雲域の発生から空港を抜けた直後までの衛星赤外画像の動画をYouTubeにUP

      • 速報:2024年4月ドバイの大雨事例(1)

        UAEでは2024年4月16日は記録的な大雨となり、1日で平年の年間降水量の2倍を超える雨が降ったところもあると報道されています。ドバイ国際空港は日降水量が100mmを超える大雨となり、空港が冠水して、航空機は水飛沫を上げながら滑走路を移動していました。飛行場での観測から、雷雲が5回も通過していました。 この現象について、飛行場の観測と気象庁全球数値予報システム(GSM)の初期値を利用して、大雨などの要因について推測します。今回の記事は地上実況、地上天気図、925hPa面の

        • 航空機からの雲の写真とフライト情報を重ねた衛星画像

          航空機から雲を眺めると、島付近に雲が出ていたり、雲の種類が変わる境界を見かけたり面白いです。時には、航空機から撮影した雲の写真と気象衛星画像を比較したくなります。 この記事では、2024年4月11日ANA090便(石垣島空港から羽田空港)搭乗を例に、フライトの高度時系列図や飛行経路図、これらの情報を重ねた衛星画像の図を作成します。これらの図と航空機から撮影した雲の写真と合わせて眺め、雲の変化や、雲の多様性を感じもらえたらと思います。 衛星画像データの取得は千葉大学環境リモ

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        記事

          関東地方南部における南岸低気圧接近・通過時の降雪と発雷

          関東地方南部では、冬季に本州の南岸を東へ進む低気圧、南岸低気圧によって雪が降り、積雪になることがあります。この気象学的な構造はよく知られていて、東京管区気象台のホームページに詳しい解説があります。 2024年2月5日、低気圧が関東の南海上を東北東へ進みました。東京では雪が降り積雪する中、同時に雷も観測されました。過去にも関東地方南部において、南海上を低気圧が接近・通過する際に降雪と発雷した事例がいくつかあります。ここでは4事例について、長期再解析資料JRA-3Qを活用して解

          関東地方南部における南岸低気圧接近・通過時の降雪と発雷

          MetPy 1.6を利用したEmagram 、ホドグラフなどの図の改良

          はじめに  2023年末にMetPyのversion 1.6が公開され、ゾンデ観測から混合を考慮したCAPEやメソスケール対流系の移動を算出する関数などが追加されました。Skew-Tやホドグラフ、安定度などのパラメータテーブルのサンプルコードも新しくなりました。以前、エマグラムなどのコードを紹介しましたが、新しいサンプルコードを参考に、安定度などのパラメーターのテーブルを追加し、ホドグラフにスーパーセルの推定される移動ベクトルの追加、さらに混合を考慮したパーセルや最も不安

          MetPy 1.6を利用したEmagram 、ホドグラフなどの図の改良

          JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-3

          1976年9月11日、香川県小豆島では記録的な大雨となりました。これまでの記事で、雨量の観測値や当時の天気図から気象や災害の状況を確認し、気象庁第3次長期再解析(以下、JRA-3Qと略)を利用して、等圧面天気図や地上天気図から大雨の要因を検討しました。 この大雨の日、台風が屋久島近海に停滞し、日本海西部から東北地方へのびる前線が強化しており、このような状況の中で四国付近では南海上から暖かく湿った空気が継続的に流れ込んでいることがわかりました。さらにこの暖かく湿った空気が、紀

          JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-3

          JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-2

          前記事では、香川県小豆島で記録的な大雨となった1976年9月11日の事例について、雨量の観測値や当時の天気図を示して気象や災害の状況を確認しました。さらに気象庁第3次長期再解析(以下、JRA-3Qと略)を利用した等圧面天気図を作成し、この日の総観場を考察し、台風が屋久島付近の海上で停滞したこと、日本海西部から東北地方へのびる前線が強化し、また四国の南海上から四国付近に暖かく湿った空気が継続的に流れ込んでいることがわかりました。 今回の記事では、JRA-3Qのモデル格子データ(

          JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-2

          JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-1

          気象庁第3次長期再解析(以下、JRA-3Qと略)を利用して、日降水量の全国第5位(2023年9月現在)である1976年9月11日香川県内海 765.0mmの大雨事例について総観規模から要因について調べます。合わせて、JRA-3QのGRIB2データの入手や読み込み方、作図のコードなども記事にします。 なお、JRA-3Qは1947年9月から現在までを対象とした気象庁が作成している再解析です。この記事作成で使用したデータは、文部科学省の補助事業により開発・運用されているデータ統合解

          JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-1

          日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (3/3)

          対流雲域の移動に沿った鉛直断面図 組織化した対流雲域が、9時から21時に移動した位置にほぼ沿った鉛直断面図を作成しました(図11)。この断面図は、2023年5月23日9時、15時、21時のECMWF初期値の相対渦度をカラーで示し、図中左上に断面図の位置(線分)と500hPa面の等高度線を示しています。また、縦軸の1020hPa付近に、対象の対流雲域の位置を赤丸で示しました。 9時は対流雲域に対応すると考えられる正渦度は地上から900hPa面において明瞭でした。その北側に

          日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (3/3)

          日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (2/3)

          500hPa気温と700hPa湿数の天気図 気象庁FAX図「FXFE5782」(上図)と同等な天気図、500hPa面の気温と700hPa面の湿数を示す天気図を作成しました(図7)。 この図から注目している対流雲との対応について、500hPaの小規模な気温の極小域(以下、寒気コアと称する)が23日3時に朝鮮半島北部にあって、南東へ進んでいます。日本海西部を通って、23日21時には福井県付近に達しました(図8参照)。 この気温極小値と対流雲の経路は、近畿北部の沿岸部で交差

          日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (2/3)

          日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (1/3)

          2023年5月23日夜、近畿地方では当初予想されていない雷雨となりました。これをもたらした組織化した対流雲は、スケールが100km程度で孤立しており、数値予報モデルでも予想が難しい現象でした。今回はECMWFのOpen Dataからヨロッパの全球モデル(GRIB2ファイル)をダウンロードし、MetPyを利用して、この対流雲が日本海で発生・発達した頃の総観場・環境場を調べます。 コードについては、ECMWFのOpen DataなどGRIB2の読み込み方についての情報を紹介し

          日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (1/3)

          短時間の大雪事例と寒気質量について(2)

          前回の記事「短時間の大雪事例と寒気質量について(1)」の続きです。寒気質量と短時間強雪の対応関係を中心に事例解析を示します。 2010年12月31日の岩手県の大雪事例前回の記事で示した通り、2010年の大晦日は鳥取県西部の大山や米子で6時間降雪量がこれまでの一番の記録を更新しました。この同じ日に、鳥取県から遠く離れた岩手県でも6時間降雪量がアメダス奥中山で48cm、区界で46cmを観測し、これらの地点ではこの観測が通年1位の記録となっています。 盛岡地方気象台が平成23年

          短時間の大雪事例と寒気質量について(2)

          短時間の大雪事例と寒気質量について(1)

          強い冬型の気圧配置により、日本海側の地方を中心に局地的に短時間で大雪となる場合があります。その要因は、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)や、筋状の雲域の停滞、Tモードの雲域、小さな低気圧、地形性の降水であったり様々です。また、海水温や大気の安定度、下層収束などの影響も小さくありません。 ここでは、Iwasaki et al. (2014) により定義された寒気質量DPなどをJRA55から算出して、いくつかの記録的な短時間の大雪事例との対応関係を見ていきます。 この記事に掲載

          短時間の大雪事例と寒気質量について(1)

          湿球温度による推定雪水比を利用した2022年1月6日関東大雪のGSM降雪量予想

          前々回の投稿「2022年1月6日関東地方南部の大雪時の湿球温度とアメダス気象観測データプロット図」では、雨雪判別で利用する物理量は温度より湿球温度が適していることがわかりました。今回は、降雪量予想に利用する雪水比の推定に湿球温度を利用することを検討し、ロジスティック関数でやや強引に近似して、2022年1月6日関東南部の大雪事例におけるGSMの降雪量予想分布図を作成しました。 雪水比を推定する際に湿球温度を利用するのがいい?そこで雪水比(降水量に対する降雪量の比(単位:cm/

          湿球温度による推定雪水比を利用した2022年1月6日関東大雪のGSM降雪量予想

          気象庁数値予報天気図のカラー版

          気象庁ホームページで公開されている、気象庁数値予報天気図には伝統的な主な予想天気図が5種類あります。  ① 500hPa面高度・渦度の天気図  ② 700hPa面湿数と500hPa面気温の天気図  ③ 850hPa面気温・風と700hPa面鉛直流の天気図  ④ 850hPa面相当温位・風の天気図  ⑤ 地上気圧・風と降水量の天気図 これまで、①は記事「GSMの500hPa面天気図作成 1から3」で、②は記事「700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図 1から2」でMet

          気象庁数値予報天気図のカラー版