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航空機からの雲の写真とフライト情報を重ねた衛星画像

航空機から雲を眺めると、島付近に雲が出ていたり、雲の種類が変わる境界を見かけたり面白いです。時には、航空機から撮影した雲の写真と気象衛星画像を比較したくなります

この記事では、2024年4月11日ANA090便(石垣島空港から羽田空港)搭乗を例に、フライトの高度時系列図や飛行経路図、これらの情報を重ねた衛星画像の図を作成します。これらの図と航空機から撮影した雲の写真と合わせて眺め、雲の変化や、雲の多様性を感じもらえたらと思います。

衛星画像データの取得は千葉大学環境リモートセンシング研究センターのデータベースを、フライト情報はFlightradar24の有料プランから取得したCSVデータを利用しています。

図はPytonを利用して作成しています。最後にこのコードを添付します。興味のある方はダウンロードしてみてください。このコードを参考に、様々な情報、例えば数値予報モデルの等値線などを気象衛星画像を重ねて作図することができるでしょう。今後、MetPyも使って衛星画像にGPVデータを重ねるコードを作成して記事にできればと思っています。


使用するデータについて

衛星画像データは、千葉大学環境リモートセンシング研究センターの衛星データのデータベースを利用しています。このデータの取得や描画については、LabCodeさんの記事も参考にしました。この記事に紹介されているコードに加えて、画像データから必要な領域だけを抜き出す処理を追加して、作図処理の高速化を図っています。

飛行経路や高度などのフライトの情報は、Flightradar24の有料プランからCSVデータとしてダウンロードできます。今回はこれを利用します。CSVの一部を下に示します。時刻、コールサイン、高度、緯度、経度、スピード、方向のデータが入っています。

Timestamp,UTC,Callsign,Position,Altitude,Speed,Direction
1712807172,2024-04-11T03:46:12Z,ANA90,"24.39259,124.242043",0,90,36
1712807179,2024-04-11T03:46:19Z,ANA90,"24.395794,124.244568",0,130,36
    一部省略
1712807231,2024-04-11T03:47:11Z,ANA90,"24.420698,124.276306",1925,186,70
1712807236,2024-04-11T03:47:16Z,ANA90,"24.422375,124.281021",2050,195,68
    一部省略
1712815828,2024-04-11T06:10:28Z,ANA90,"35.551666,139.790634",0,0,165
1712815836,2024-04-11T06:10:36Z,ANA90,"35.551434,139.790573",0,7,165
1712815858,2024-04-11T06:10:58Z,ANA90,"35.55114,139.790009",0,0,165

フライトの高度時系列図

フライトの情報を使って、横軸に時刻(UTC)、縦軸に飛行機の高度(ft)の図を作成しました(図1)。この例では、石垣島を離陸後およそ18分後に巡航高度に達し、この高度は37000から39000ftであったことがわかります。着陸のおよそ30分前から高度を下げています。

離陸してすぐ、日本時間12時46分(03:46UTC)頃 に機内の窓からほぼ同じ高度の雲が横ぎりました。その時の写真を図2に示します。図1から高度は1000から2000ftの間くらいとわかります。石垣島空港の04UTCのMETAR観測では、1400ftとなっていました。

METAR ROIG 110400Z 11007KT 080V150 9999 FEW014 27/22 Q1016=

着陸少し前、日本時間14時56分(05:56UTC)に飛行機が雲の中から出て、すぐ撮影した写真が図3です。図1から約5000ft(およそ1500m)だったことがわかりました。

図1 2024年4月11日 ANA090便(石垣島から羽田)の高度時系列図
図2 2024年4月11日12時46分頃
ANA090便の左側窓から撮影(石垣島周辺)
図3 2024年4月11日14時56分頃  ANA090便の左側窓から撮影
(千葉県上空、中央右端付近の雲のすぐ下に見えているのは富津岬)

飛行経路図

フライトの情報を使って、平面図の飛行経路図を作成しました(図4)。この経路の他に、羽田(RJTT)と石垣(ROIG)の空港の位置を紫の丸で、撮影時刻(UTC)の位置を緑の逆三角を示しています。

図4 飛行経路図 2024年4月11日 ANA090便

フライト情報を重ねた衛星画像

飛行経路図に可視画像(03:50UTC)を重ね合わせた図を作成しました。撮影時刻(UTC)の位置や時刻は見やすいように色を変更しました。この可視画像は、離陸時刻頃の画像になります。

図5 飛行経路(2024年4月11日 ANA090便)に12時50分の可視画像を重ねた図
(画像は解像度1km相当を利用)

航空機からの雲の写真と可視画像

図6に12時50分の宮古島周辺の可視画像に、写真(図2,7-10)の撮影時刻の大体の位置と矢印で撮影方向を示します。宮古島周辺で撮影した写真を、図7から10に示します。参考のために、この日12時の速報天気図を図11に示しておきます。

図6 2024年4月11日12時50分の可視画像に撮影の場所と時刻と方向を示した図
(画像は解像度500m相当を利用)
図7 12時52分頃の写真(多良間島と水納島)

図6と図7を合わせてみてください。多良間島を起源に下層雲が発生していて、西北西方向に30km以上はのびています。島では、風上の東側はよく晴れていますが、風下の西端では雲が多くなっています。

図8 12時55分頃の写真(宮古島付近)

図6から、図7の多良間島と異なり、宮古島では風上にも下層雲があります。図8から雲頂高度が高いためと考えられますが、雲頂部分は南よりの風が吹いていて北に雲が流れています。

図9 12時57分頃の写真(宮古島付近)

図9には宮古島の北にある小さい島ですが写っています。図6から、この島の東側では背の低い積雲にほぼ覆わられた領域があります。ANA090便ではこの雲域に達するまでは、島が要因として発生または発達したような雲域が中心でした。

図10 13時1分頃の写真

図10では、背の低い積雲が海上に散在しています。図6からはこの雲域は明瞭ではありませんが、東シナ海のごく一部に広がっているようです。

図7から10に宮古島周辺で見られた航空機から見た雲を紹介しました。図11の通り緩やかに高気圧に覆われている状況であっても、図6の衛星画像からも分かるように、雲域は地形や安定度などの様々な影響で多様な形態をしていることを再確認できました。

ひまわり8/9号となって解像度500m相当と細密な画像を作成できるようになり、航空機から撮影した雲の写真と比較するのは、さらに楽しくなっています。

図11 2024年4月11日12時の速報天気図
(気象庁作成)

作図コードの提供

作図に興味がある方のために、pythonで記述したjupyter notebookのコードを公開します。コード中にはコメントをなるべく記述するようにしていますので、参考にしてください。

なお、実行するには pandas, matplotlib, cartopyなどのmoduleが必要になります。適宜インストールをお願いします。

参考文献

・ひまわり8/9号  グリッドデータの公開(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)
 https://ceres.chiba-u.jp/database-ceres/satellite/
 http://www.cr.chiba-u.jp/databases/GEO/H8_9/FD/index_jp_V20190123.html

・Flightradar24
 https://www.flightradar24.com/

以上、読んでいただき、ありがとうございました。


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