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歪む、歪む

 私を形成するものは、自己犠牲と傲慢な本性。青い時期は、あっという間に過ぎるものよと、笑う義母の笑顔が鼻につく。踏みつけてやろうと、毎晩、私は足踏みをした。

「綺麗なお母さんでよかったね」

 そんなことを小さいころからよく言われていた。それは、どういう意味なのだろう。あなたとは違う遺伝子だからと、私は自分を否定されているような気がした。

「優しくありなさい」

 父はいつも、決まってそう言った。もちろん、父の言うことが、世間でいう正であることくらい、知っている。私は、言いつけ通り、模範的な人間になった。

「あなたに任せておけば大丈夫だと思った」

 社会人になっても、私の評価は変わらない。いつでも優秀であろうとする。偽物の評価を得るために、私は私を潰して生きている。

「誰のための人生?自分のためでしょ」

 偉そうに説教する友人は、ふらふらと今でも定まらない人生を歩む。それが自分で手にした自由か。守られて生きる人間が手にした偽りの自由など、ただの空想でしかない。

ーあなたは囲まれた庭で走り回る犬と同じ。それは真の自由なんかじゃない。

 私は、また言葉を飲み込んだ。

「それじゃあまたね」

 手を振る私は、作り笑いをしながら、ここでもいい友人を演じている。友人の後ろ姿がみえなくなると、引きつった笑顔は真顔になった。

 カーブミラーに映る私は、どこか歪んで見えて、立ち止まる。
 
 私のようで、私ではない。そこに映るのは、歪んだ私だ。立ち止まっても、後戻りはできない。嘘で固められた私は、多分もう、自分という原型を留めていないだろう。

 歪む、歪む。
 
 これが、私の人生。

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