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(読書感想文)クラバート

プロイスラー作「クラバート」読了。

荒地の水車場の見習いになった少年クラバートは、親方から魔法をならう。が3年後、自由と、ひとりの少女の愛を勝ち得るため、生死をかけて親方と対決する日がやってくる。
ドイツの一地方に伝わる「クラバート伝説」をもとに、現代の語り部プライスラーが、11年の歳月をかけて練り上げた壮大な長編小説。


手に取ったきっかけ

オトフリート・プロイスラーは、かの「大どろぼうホッツェンプロッツ」の作者でもあり、この「クラバート」は「千と千尋の神隠し」の源流とも言われているらしい。

手に取ったきっかけは娘の公文だ。

くもんの「すいせん図書」にあった文章問題で「クラバート」が取り上げられていた。

娘が「なんで身体がカラスになっているんだろうと思った」と書いた回答に、先生が「クラバート、読んでみてください」とコメントしていたのが記憶に残っており(というか、先生がコメント書くことなんてほとんどなくて珍しくて覚えていた)、図書館で予約して借りてみた。
予約図書を受け取りに行って驚いた。
「分厚い…!」
オンラインで予約したから気付かなかった。児童書というからもっとボリュームが少ない(「エルマーのぼうけん」くらい)かと侮っていた。

そのまま子供に渡してもさすがに読まない気がして(借りたことは伝えた)、ただせっかく借りたので私が読んでみたというわけだ。

ハードモードの序盤

序盤は、夢の中のお告げだったり、パワハラ気質の親方だったり、収容所かと思うほどのキツくハードな生活だったり、不審な死があったり、ちょっと怖めな描写が続いて、読むのが若干しんどかった。

だが、後半はテンポよく進み、頭が良くない振りをしていた人物が実は聡明だったなど、劇的な展開を見せた。

全体としては魔法が出てきたり、カラスだったり、掟などがある意味では、ファンタジーであり、故に児童書に分類されるのかもしれない。

前情報ゼロで読み始めて、わけがわからず怖い奇妙な描写ばかり出てくるなと思いながら辛抱強く読み進めていたが、なるほどそういうことかとわかってきたら、それを知った上でさっきのところまた読みたいと、戻って再読したりもした。

状況を受け入れるということ

クラバート少年は逞しい。
冒頭の描写から、息子を持つ親としてはいたたまれないような気持ちにもなったが、隣の青い芝は見ずに、自分の不遇を嘆くことなく、状況を受け入れてその中で最善を尽くすクラバート少年に、海外文学ならではとも言えるタフネスを学んだ。

⭐︎⭐︎⭐︎
冒頭で書いた通り、本作との出会いのきっかけは娘の公文の国語だった。
育児からは人間性だったり社交性だったり忍耐だったり、タスクのリソース配分だったり、いろいろなことを学ばせてもらっているが、まさか読書の幅を広げるきっかけにもなるとは。

このセレンディピティ的な偶然の出会いと、それに伴う知の世界を広げる体験(愉しみ)を、いつか子供たちも味わってくれるといいなと思う。

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