白鳥のかたちの噴水見にゆかむ 春、白鳥の絶へしみやこに アザレアはあふれてやまずこもれびは神経のごとひかりてやまず かすかなる熱たづさへて蜂は来ぬ死のに…
海中に都はありやいくたびも夢の瀬戸にてふなべりを越ゆ 六道はめぐりめぐりて謡ひつつをんなは語るほろびのさまを 竜宮のあるじとなりて幼帝は水天門に母を待つらむ か…
きんいろの溶けたバターのひだまりに老いたる犬のはるかな眠り 人とは違ふ時間を生きてゐることを伝はる鼓動のはやさに知りぬ おとろへた耳管の奥に降る音がやさしい雨で…
八月のひかり重たしあへぎゐる夏草の上、ひとつの諫死 こなごなの光を踏んで立つてゐた 背に鋭きうろこを隠し 流氷の海を見てゐるまなざしにきみは云ひたりダリアの赤を…
ひらかれた夏のミットを響かせて投げこんでゆく青いたましい 反発する磁極のようにひりひりと目を逸らしあう蝉声のなか 見えていた遮断機、だけど信じたいことがあるんだ…
最初に短歌を「いいな」と思ったのは、ツイッターの〈ひとひら言葉帳〉で流れてきた目黒哲朗さんの短歌、 君よたとへば千年先の約束のやうに積乱雲が美しい だった。 最…
とほくちかく楽はながれてさらさらと古きフィルムに降りつづく雨 櫂の音 舟と舟とがかち合ふ音 霧ふかき湖にしづかに響く あをじろき真珠のつぶを吐くやうに語るをみ…
少女期のしめりを帯びし手のひらに十薬の白ほのかににほふ 火の気配するゆふまぐれ祖母の小枝のやうな外国煙草 雷魚日々乾びつつあらむ雨雲の過ぎたるのちの白き路上に …
小野りすと申します。 短歌をつくっています。 どうも世間の流れの速さについて行けず、もう少しのんびり、自分なりに短歌と向き合ってみたいと思い、noteを始めてみまし…
小野りす
2024年4月29日 18:28
白鳥のかたちの噴水見にゆかむ 春、白鳥の絶へしみやこに アザレアはあふれてやまずこもれびは神経のごとひかりてやまずかすかなる熱たづさへて蜂は来ぬ死のにほひする植物図にも夢とうつつの隙間にすべり落ちたままかへらざるわが羊をおもふ雨の絵に雨描かれずうるみゆくこの世のそらをさすらふ、月はひとは花 白き歌集にかげろふの翅をはさみてゆく四月尽
2024年4月26日 18:49
海中に都はありやいくたびも夢の瀬戸にてふなべりを越ゆ六道はめぐりめぐりて謡ひつつをんなは語るほろびのさまを竜宮のあるじとなりて幼帝は水天門に母を待つらむかけてゆく子らの背を追ひはつなつの関門海峡歩いてわたる
2024年4月26日 18:45
きんいろの溶けたバターのひだまりに老いたる犬のはるかな眠り人とは違ふ時間を生きてゐることを伝はる鼓動のはやさに知りぬおとろへた耳管の奥に降る音がやさしい雨であつたらよいがしまらくを鳴いてゐたるを大き伸びひとつせしあとしづかになりぬまるき頭蓋なでたるのちにまだうすくひらきしままのまぶた閉ざせり台の上にねむるかたちにうづくまるちひさき骨の朽ち葉のかるささゐさゐと雲は夕日を運びつ
2024年4月15日 22:53
八月のひかり重たしあへぎゐる夏草の上、ひとつの諫死こなごなの光を踏んで立つてゐた 背に鋭きうろこを隠し流氷の海を見てゐるまなざしにきみは云ひたりダリアの赤を吐水口しんと冷えたりまひるまのタイルにふれるみづのさみしさ夏菊のにほひをさせてきみがつく嘘 きららかな雨を思はすとけあつてひとつの水にかへつてもなほあふれくるかなしみはあり風しづかにうごきゐる午後ひぐらしのこゑが時間を刻
2023年12月19日 12:51
ひらかれた夏のミットを響かせて投げこんでゆく青いたましい反発する磁極のようにひりひりと目を逸らしあう蝉声のなか見えていた遮断機、だけど信じたいことがあるんだ 今だけ ここだけゆっくりとその感情を飲みくだし入道雲のかがやきを云うこの場所に立ったらひとり 照りかえす白さのなかにまぶたを閉じる土を噛むスパイクのピン 太陽を盗みとるまでのコンマ一秒心臓で海が鳴ってる うなずいて答え
2023年12月12日 11:21
最初に短歌を「いいな」と思ったのは、ツイッターの〈ひとひら言葉帳〉で流れてきた目黒哲朗さんの短歌、君よたとへば千年先の約束のやうに積乱雲が美しいだった。最初はこれが短歌だと気づかなかった。初句と結句に字余りがあるし、そもそも短歌というものにとりたてて興味がなかったからだと思う。ただ、強烈に惹かれた。当時わたしは『進撃の巨人』の二次創作小説を書いていて、その世界観に、この歌がぴったり
2023年12月1日 15:22
とほくちかく楽はながれてさらさらと古きフィルムに降りつづく雨櫂の音 舟と舟とがかち合ふ音 霧ふかき湖にしづかに響く あをじろき真珠のつぶを吐くやうに語るをみなのこゑやはらかしゆたかなる黒髪は束ねられしままつひに男のかほを覆へりいまもまだただよひてゐるかもしれずみづうみに死者をのせたる舟は初出『西瓜』第九号〈ともに〉欄〈ともに〉欄の〆切間近になっても何も思い浮かばず、投稿をあ
2023年11月30日 16:20
少女期のしめりを帯びし手のひらに十薬の白ほのかににほふ火の気配するゆふまぐれ祖母の小枝のやうな外国煙草雷魚日々乾びつつあらむ雨雲の過ぎたるのちの白き路上にほのぐらき八手の玉よ水びたしのこころにひらくみづいろの傘金柑のあまたともれる庭にゐる さびしきものをかたへに置きて初出『西瓜』第八号〈ともに〉欄この連作は東郷雄二先生のサイト『橄欖追放』で取り上げていただいて、とても嬉しか
2023年11月28日 14:52
小野りすと申します。短歌をつくっています。どうも世間の流れの速さについて行けず、もう少しのんびり、自分なりに短歌と向き合ってみたいと思い、noteを始めてみました。短歌のほかには、小説、能、競馬、古い建物、阪神タイガースが好きです。少し前まで『艦隊これくしょん』にはまっていましたが、あまりにも時間どろぼうなので封印中です。(でも軍艦は好き)ひとまず自己紹介を兼ねて、自選短歌を。初