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わたしのネガティブ街道


わたしは基本ほわほわと生きていますが、たまに
とんでもなくネガティブになるときがあります。

そのひとつが、人前で話をするとき。
それにくわえて、自分の考えを伝えるときです。


”自分の考えが間違っていたらどうしよう”
”反論されて答えられなかったらどうしよう”

失敗することばかり考えて勝手に自信を無くし
不安に押しつぶされそうになる。
とにかく苦手なのです。こわいのです。

じわじわ手汗が滲み、吐く息はほそく頼りなく。
座っているのに足が震えている気がします。
緊張のあまり異常に舌の周りが良くなる。
すべてが早口言葉ってくらい滑舌が良くなる。

間違っていてもいいじゃん!
自分と違う考えは学びになるんだから!
そう思える人間であればよかったのでしょうが、
残念ながらわたしにはそんな度胸も経験もなく。
なるべくなら間違いたくないし、なんならすべて
肯定されていたいと願ったのです。



そんなわたしがwebセミナーの講師を務めることになってしまいました。
人前で、自分の考えを不特定多数に伝えるなんてとんだダブルパンチ、失神寸前。

医療職であるならば避けては通れない勉強会、
お世話になっているドクターに肩を叩かれ
断れるはずがありませんでした。

あれよあれよと話は進み、
セミナーのポスターにでかでかと名前が載り、
それを眺めては鬱々と溜息を吐く毎日。

そんな矢先、購入して2年経たないパソコンが壊れ
データが吹っ飛ぶというハプニング。なぜ今!
職場のパソコンを使わせてもらって、
業務終了後へとへとで残業し、泣き言を
呟きながら資料を作っていました。もうやだ!

わたしなんかのはなし、誰が聞くの。
大したこと言えないし、もっとセミナー向きの人
たくさんいるじゃない!

なんて今さら言えるはずもなく。

セミナー当日、手汗だらけの両手を握りしめ、
失敗したらどうしよう、意味わからないって
言われたらどうしようと目線をぐるぐる
彷徨わせるわたし。



さあ、いざ講演。



終わってみればあっけないもので。
質問は答えられることばかり、わたしの考えに
反論してくる人もいませんでした。

それどころか、思ったより多くの人がわたしの
話を聞いてくれていて、たくさんの方にお褒め
いただきました。

”あの論文データのまとめ方、わかりやすかった”
”あの考えは面白かった、明日やってみるね”
”声のトーンがとても聞きやすかった”

わたしは専門職であるので、同じ医療職とはいえ
同職でないとどうしてもわかりにくいところも
あったと思います。
だからこそ質問が怖かったし、理解できないと
思われるんじゃないかと不安だったのです。

そのはずなのに、他職種の方たちから
そんなことばをたくさんかけてもらいました。


どの職種の人が聞いているのかわからないから、
仕事の日も休みの日も時間を費やし、あらゆる
データを集め、他の職種の論文も片っ端から
読みあさりました。
伝えることが苦手だからこそ、わかりやすいよう
写真やグラフ、アニメーションを取り入れて
伝わりやすいよう心がけました。
どの文章にどう補足するか、アニメーションの
タイミングや話す速さまで、何度も何度も
リハーサルしながら発表原稿を仕上げました。

とにかく失敗したくない、意味がわからないと
思われるのがこわい、という一心で。


ですが裏を返せば、それは相手が何を聞きたいか
先読みし、知りたいデータを集め、明日から
使える情報を吟味し、それが頭に残るように
話し方、トーン、スライドの流れまで
調整したうえでお話しさせて頂いたということ。

あくまでも、失敗したくないがため、
笑われないためではありましたが、入念に準備を
重ね、相手の立場に立って話せたということ。

人前に出ることに苦手意識が強く、ネガティブに考えがちなわたしだからこそ、結果的に相手に
伝わりやすいものを作ることができていたと
気付いたのです。



ネガティブなのはたぶん、あまり良くはない。
できるなら上を向いて歩いたほうがいいし
自分もしあわせであれる。

でも、怖がりで不安ばかりなわたしだからこそ
誰かのことを人一倍考えることができました。

あれ、たまにはネガティブ悪くないのでは?と
なんとなくだけどおもってしまった。

嫌だと思った時間は無駄な時間ではなかった。
すべて終わった後に飲むちょっと高い珈琲は
いつもより美味しかった。 



あれから3日後、別のドクターから
うちの部署でも話して欲しいと言われ、
もう1回人前で喋ることになりました。

某人気漫画、雷の呼吸を使う男の子のように
無理だよお〜出来ないよお〜、と
めそめそ泣きながらまたもや残業の日々。
たった一回認めてもらえたところで
何度もやりたいものではないし嫌なものは嫌。
相変わらず、人前に出る自分を想像するだけで
じっとり汗が滲みます。


でもきっと、そこまで酷いことにはならない。


前よりは、素直にそう思えます。
ネガティブなりに成功体験になったみたい。

そんな経験を繰り返し、
失敗してもいいじゃん!と笑い飛ばして
人前に立てる日が来るのでしょうか。
わたしにはまだまだ遠い道のり。
ポジティブにはほど遠い。

それでも、ネガティブだからこそ
見えるものがあるし、できることがある。
ポジティブな人には見えない景色がきっとある。

ポジティブには憧れるけど、
苦手なものにはとことんネガティブになって、
ネガティブなりに出来ることを見つけよう。

とりあえずは目下、次のセミナーへ。
わたしのネガティブ街道はまだまだ続きます。



わたしのネガティブ街道



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