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「姫」の逃避先

幼い私が苦痛から逃れるために手に入れた世界です。



アニメと映画


空虚な私を癒してくれたのは、アニメと映画でした。
テレビからは学ぶことが多いという理由で我家は基本テレビ見放題で、放置されている間、ずっとビデオを観ていました。

トトロ、ナウシカ、ラピュタ、ジュラシックパーク、ガメラ、学校の怪談、辺りは特によく観ていました。それはもう毎日、何時間でも。

作品に夢中になっている間は、辛いことも苦しいことも全て忘れられました。
アニメは私にとってモルヒネでした。
痛みを消してくれる最高の薬。
けれど傷を治してはくれない、依存性の高い麻薬でした。

母はテレビばかり見ている私を叱りましたが、
親子で健全なコミュニケーションが取れていれば、子どもに適した習い事やイベントを与えていれば、こうはならなかったのです。



空想と妄想


弟が生まれて、よりアニメと映画に依存しました。
しかし、もはやそれでも足りず、私は空想と妄想に耽るようになりました。
脳内の世界はどこまでも自由で、痛みを一瞬で和らげてくれます。現実離れしていればいるほど、快感を伴いました。
しかも、テレビと違って何処でも見られます。
おかげで、日に日に脳内世界にいる時間が長くなり、酷いときは一日中、帰って来ない帰って来れない日もありました。

私は、現実を生きず、脳内世界から生まれた架空の人物の人生を歩んでいたのです。
現実を生きられず、放棄された私の実生活は歳を重ねる毎に荒み、手の施しようがなくなっていきました。


漫画、そして絵を描くこと


文字が読めるようになってからは漫画が主流になりました。

そして、絵を描く楽しさに気付いたのです。

絵を描いている間は、絵のことだけを考えていればいいのです。
ただ己の研鑽だけを求めればいい、シンプルな世界です。

脳内世界から帰って来れない私を現実に呼び戻し、繋ぎ止め、生産性を与えてくれる建設的な世界。

私は、将来これを仕事にしようと考えました。
一生描き続けるだろうと、信じていました。
何よりも手放してはいけないものでした。
現実の私を私たらしめ、
脳内世界と現実を繋げる唯一の存在でした。
それでも、今の私には、もう無いものです。

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