13歳のわたし〜改定版2022
■はじめに
これはちょうど5年前、長女になったつもりで書いた物語。
登場人物の名前は架空ですが、内容は実話です。
長女は7歳半からずっと反抗期、一時期の返事は「知らない」か、無視。
私は母親として子どもの反抗期に体当たりで挑んでいましたが、どうにも上手くコミュニケーションがとれませんでした。
そこで、長女の気持ちになってみたらどうかと思い立ち、密かにショートストーリーを書いたのです。
書いてみて、ハッとしました。
数十年前の13歳の自分が鮮明に映像として、感情として一気によみがえり、ドドドーっと押し寄せてきたではありませんか!
母親である私も13歳が一番とがっていたんだ!
13歳ってちょうど心と体が子どもから大人へと向かう途中です。自分でもわけがわからない大変な時期なんですよね。
今年(2022年)の誕生日で18歳を迎える長女は長かった反抗期も終わり、今では私以上にしっかりと家族を仕切ってくれる頼りになる存在です。
もう、追い越されたことばかり。
11月の誕生日には成人の仲間入りをする長女へのリスペクトと愛を込めて。
2020年初公開の誰にも見せたことのなかったショートストーリを本日改訂版としてもう一度公開します。
*****
13歳のわたし
わたし、ママがキライ。
たぶん。
妹も弟もキライ。
たぶん。
家族はパパだけでいい。
パパと話す、パパと手をつないで歩く。
それだけでいい。
わたしは家でも学校でも気が合う人とだけ一緒にいたいタイプ。
自分の世界をこれ以上広げたいなんて1ミリも思ってない。
それで居心地がいいなら、いいじゃん。
勉強頑張ってるでしょ?
いい成績取ってるでしょ?
自分のことは何でもできてるでしょ?
ママなんか全然できてないことばっかりじゃん。
なんか文句ありますかー?
あー、またママが吠えてる。
「ちょっとー、誰か太郎のお尻拭いてあげてー、手が離せないのー。」
「あー、無理、無理。宿題やってるから。」
「宿題なんかやらなくて結構!勉強より弟のお尻拭く方が大事だよ!」
「じゃあ、わたしが学校で先生に怒られてもいいのね?!」
「いいよ。ママが説明しに行く。」
わたしは持っていたボールペンを少し乱暴に置き、無言で席を立つ。そして、トイレでお尻を出して無邪気に待っている太郎の元へ向かう。
もちろん、かなり不機嫌。
わたしは誰にもわたしのことを分かってもらえない孤独な13歳。
勉強が楽しくて邪魔されたくないのに、ウチのママときたらなーんにも分かってくれない。
「わたし、学校の勉強だけがしたいの!ウチの手伝いなんか一切やりたくない!」
ある時、勢い余って言っちゃった。
ママは鬼の様相で応戦してくるかと思ったら、意外。
「あっそ。じゃあ、そうすれば?」
え、ホントに?!
やったーっ!
遂にやりましたーっ!
勝利を勝ち取りましたーっ!
わたしは、天にも昇るルンルンな気分。
お手伝いから解放された!
これで堂々と好きなだけ学校の勉強ができる!
夏休みが始まり、パパは長期出張で留守。
ママは一人でバタバタとウチの事をやっていた。
わたしは勝ち取った権利を堂々と行使すべく、そんなママを横目に夏休みの宿題に没頭した。
今年は大満足な夏休みだー、イエーイ!
わたしが住んでいる所は夏休みが3ヶ月ある。
夏休みの宿題は前半で終わらせたから後半は大好きな読書三昧、イエーイ!
のはずだったけど…
「ねー、おなかすいたー、ご飯まだー?」
わたしの一言でママがブチ切れた。
やばい、わたし地雷踏んじゃった?
ママはわたしに近づいてきて言った。
「あなたは自分のことはよくやってる、すごいよ、それだけでも助かることは多いしね。でもね、あなたは家族の姿にもっと目を向けなきゃいけない。勉強より大事なことが世の中には沢山あるよ。もしそこまで好き勝手やるなら、自分の事は全て自分でやるんだね。」
何、何、何?!
わたしはただ、「おなかすいた」って言っただけなんですけどー。
キョトンとしているわたしに向かってママは付け加えた。
「ママもパパも、マコも太郎もみんな自分のことだけ考えてはいないよ。ウチの事もやってるよ。あなたはそれを見て何とも思わないの?!残念だけど、何も分からなかったみたいだね。今日からウチの手伝いはイヤでもやってもらいますから!!」
こうして夏休み後半は「斉藤家ルール」に乗っ取ったわたしにとっては無意味な日々となってしまった。
9月の新学期が待ち遠しくてしょうがなかった。
わたし、このウチがキライ。
だってママはわたしに嫌なことばかり言うし、マコと太郎は幼稚だし。
わたし、普段パパとしかほとんど話さない。
だからパパが出張中は結構キツイ。
パパ、早く帰ってきてー。
ママはわたしに何の不満があるって言うの?
「言葉が足りない」ってママは言うけどさ、言わせてもらいますけど、わたし、みんなと話したくないんで。
とその時、わたしは小さかった頃の自分を少しだけ思い出した。
わたしにも家族みんなと笑い転げた日々があったよな……って。
家族に言いたいやさしい言葉が頭の中にはたくさんあるけれど、口からどう出せばいいのかが分からないのか、もしかすると、そんな言葉すらもう無いのか、それすら分からない。
わかってる。
なんか一人ですごくとがってるって、わかってる。
わたし、斉藤ハナ、出口の見えないトンネルに迷い込んだ孤独な13歳。
出口はどこですか?
一筋の光をずっと探し続けてる。
この暗闇から抜け出して、みんなにぎゅーって抱きしめてもらいたいって誰よりも強く、心の底から思っているのはきっと、わたしかもしれない…
*****
■あとがき
我が家にはここイタリアで生まれ育っている3人の子供がいます。
17歳長女
語学系高校の4年生。(イタリアの高校は5年制)
5ヶ国語を使いこなす、大人顔負けのテキパキ仕切り上手な女子。
15歳次女
少し理系っぽい高校の2年生。
父ちゃん仕込みで、ささっと鯖が三枚におろせる料理が得意な女子。
11歳息子
中学1年生。(イタリアの小学校は5年制、中学校は3年制)
抜群の社交性の持ち主、一度会ったら忘れられない男子。
両親は日本人、容姿は日本人、国籍は日本。でも彼らのジェスチャーや操る言葉は日本で生まれ育った私たち両親とはかなり違います。
親としては、異国の地で育つ子どもたちは我が子でありながら、我が子ではないような感覚になることもあったり、彼らもまた幼いながらに「わたしは日本人なの?イタリア人なの?」というアイデンティティ形成の問題に直面したり。
振り返ってみてひとつ自信を持って言えることは、幼い彼らと共に過ごすキラキラとした時間は家族全員が幸せ100%だったということです。もちろん、今も!
まあ、しかし、そんな彼らにも順調な成長の証、そう反抗期が訪れます。
「13歳のわたしという物語を書くこと」は彼らの成長と向き合い続け、大人げなく時には感情的になったりもした母である私がたどり着いた反抗期の子どもの心を深く理解する方法のひとつです。
次女はすでに反抗期のピークは過ぎたようです。もちろん13歳だったころの彼女にも物語があります。「わたしの物語も書いてね」なんて本人からうれしいリクエストも入っています。近々公開します、お楽しみに。
また長男はぼちぼち反抗期かな、というところ。お姉ちゃん達とはまた違った気配。わりとママっ子だった男の子が突然クールな態度に?!これからやってくる彼の13歳の物語も数年後にはぜひ公開したいと密かに思っています。
だから、今後公開予定の物語がまだまだある、というわけです。
他にも書きたい物語があります。
13歳だった私自身の物語。
13歳だった夫の物語。これはぜひ本人に語ってもらいたい、形にしたいところです。
「13歳のわたし」をこの先も書き続けることは、親である私たち自身の経験、そして娘たちの成長と向き合ってきた体験から、13歳が心と体の成長の重要なターニングポイントだということを確信してしまった私のひとつの使命だとさえ思っています。
読んでいただく方には、子どもの成長と向き合ったり、振り返るきっかけとなるとうれしいです。
13歳という1年に限定した家族それぞれの自分史の記録ができるのも後々振り返ると良い記念になるかな、なんて思っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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※見出し画像のイラストは自分で描いています。
本文を書き終えたタイミングでiPadを開き、その時の気持ちをささっと描く。
同じテーマで自分がどんな文章を書き、絵を描くのかは、出来上がってみないと自分でもわからないという自分がわくわくするしかけです。
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