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國酒

日本酒と焼酎、みりんは、國酒である。國酒の製造には国菌である麹菌(Aspergillus oryzae)が使われている。麹菌はカビに分類され、菌外にプロテアーゼやアミラーゼを放出し、それによってたんぱく質や糖質を分解してアミノ酸やグルコースを生成し、それらを栄養源として増殖する微生物である。國酒は、アルコール発酵、すなわち微生物が増殖するために主に糖質を分解することでエネルギーを得る際にできるエタノールと二酸化酸素を利用して作られる発酵食品である。ここでは日本酒と焼酎を議論したいと思う。

日本酒

日本酒は醸造酒だが、世界に類をみない並行複発酵によって製造されている。日本酒やビールの原料には、糖分がないため、糖化が必要である。ビールの場合は、完全に麦汁を糖化させた後に発酵させるのに対し、日本酒は糖化と発酵を平行して行う、それが平行複発酵である。平行複発酵により、他の醸造酒に比べて高いアルコール度数を得ることができる。

日本酒の製法(放送大学のテキストより)

日本酒は、水と米に、麹、酵母、乳酸菌を加えて作られる。米は精米により外側にあるたんぱく質、灰分、脂肪が取り除かれ、アルコールの原料となるでんぷんの純度が高められる。その後蒸され、麹菌が注意深く、均一になるように混合され、麹が作られる。麹に酵母と乳酸菌が添加されると酒母となる。酒母を作ることで酵母を多量に生成させ、雑菌の繁殖を抑制することができる。安全性を高める先人の知恵である。酵母にはさらに蒸米と麹が混合され、もろみとなる。もろみではすでに発酵が進んでいるが、精米と麹が二度添加されるため、発酵と糖化が平行して起こっている。これが平行複発酵であり、糖の供給と消費が少しづつ進行するので、酵母の発酵限界濃度により近づくレベルのアルコールの生成が可能になっている。日本酒のアルコールは20%、それに対して他の醸造酒であるビールは5%、ワインは12%である。日本酒の歴史は大変古く、日本書紀では須佐之男命が八岐大蛇を退治したときに酒で酔わせたと書いてあるが、そんな神話の時代から、わが国のバイオテクノロジーは世界の最先端をいっていたのである。
ちなみに精米のときに残った重量の割合により、本醸造(60%)、吟醸(50-60%)、大吟醸(50%以下)と分類されている。また、アルコールを別途添加することもあり、添加しないものに純米という名称がつけられているので、覚えておくよい。日本酒を買ったり、店で飲むときに、コスパを考えることができるからである。
出雲は八岐大蛇神話があることから、日本酒発祥の地とされるが、出雲のある島根県では、玉鋼、月山、津和野盛、天穏、王禄、扶桑鶴、石見銀山、中町エニシカルなど多くの日本酒があった。各々特徴があったが、どれもおいしく、値段もそれほど高くはなかったので、ついつい飲みすぎてしまった。出雲はわが国発祥の地の一つでもあるので、また行く機会を探したいと思う。

中町エニシカルは出雲の商店街で作られている日本酒

愛媛県は、国生みの際にできた四国の顔の一つ、愛比売が県名の由来となっているが、國酒禊を作っている千代の亀酒造も愛媛県にある。國酒禊が東京では竹田さんのくろおびラーメンで飲むことができる。一度飲んだことがあるが、良い味であった。

くろおびにて、國酒禊をいただく

松山には、國酒禊以外にも、一刀両断、小富士、京ひながあった。どれも個性があり、おいしかった。

焼酎

焼酎といえば九州である。メジャーな黒霧島(芋)や木挽(芋)、高千穂(麦)をはじめ、日向古秘(芋)、百年の孤独(麦)、萌月(芋)、川越(芋)、赤江(芋)、がんこ(芋)、月夜の梟(とうもろこし)など、選択肢は多様である。宮崎でもついつい飲みすぎてしまった。

みよ、43%のとうもろこし焼酎、月夜の梟

焼酎は蒸留酒であり、もろみを蒸留することでアルコール分を高め、アミノ酸などのアルコールからみたときの不純物を低下させるので、すっきりとした味わいになっている。原料は米だけではなく、芋、とうもろこし、麦などが使われている。原料が多様なので、味のバリエーションも多いのではないだろうか。ストレート、ロックに水割り、お湯割りなど、飲み方も多様である。ウイスキーと通じるものもあろう。しかも焼酎は高くない。筆者はよく飲む酒がたまに変るが、いまは黒霧島である。その前は赤ワインだった。赤ワインよりも焼酎のほうが濃いので買う量も回数も減り、持って帰るのが楽になった。コスパが良くなったのはいうまでもないであろう。

最後に

米はわが国の文化の根幹をなす作物で、日本酒はその米が原料であるために、よりわが国を象徴している國酒であるとは思うが、焼酎だって負けてはいない。焼酎のひとつである泡盛は米、しかもタイ米を原料としている沖縄の國酒である。よりインターナショナルな背景をもつ國酒ではなかろうか。日本酒と焼酎を併せ持つわが国は世界に誇る酒文化を持っているのである。

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