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学んで、自由になる

 スタートアップセミナーに参加した話。

 今回、参加したセミナーはいわゆるベンチャー企業とか、そういう大規模な事業の立ち上げではなく、私たちのような夫婦で、あるいは一人で、あるいは仲間と立ち上げるような、そういうごく小規模な事業の立ち上げ方といった内容で、自分にもとてもしっくりくるテーマだった。

 目からウロコ的な話もいくつかあったし、「なるほど。そう考えればいいのね」とヒントになるようなものもあった。しかし、何より「やっぱり失敗しないほうがいい(とはいえ、失敗はつきものだけれどね)」という話が強調されていた。
 じゃあ、どうすれば失敗が避けられるかというと「顧客の強いニーズ(お金を出してまでほしいと思えるか)」を核に据えないといけない、という話だった。
 そして、もし自分のビジネスアイデアが顧客のニーズとマッチしていない(つまり売れない)と感じたら、潔くあきらめることが肝心という話もあった。

 そこまで聞いて、ふと「私がこれまで考えてきたビジネスアイデアにお金を出す顧客はどれくらいいるのか?」と不安になった(←何かとすぐに不安になる・笑)。社会的課題を解決するような取り組みではあるものの、金銭的に継続が困難であれば仕事を畳まざるを得ないし、そうなれば開業時に顧客になってくれた人々にも迷惑をかけることになる。
 まさに自分が漠然と不安に感じていたことを目の前に差し出された気分になった。

 ちょうど前日に顧客候補の知人のところに行って、インタビューリサーチに失敗した(「それはお金になる仕事ではないな」とはっきり言われた)ところだったので、よけいにズーンと響いた次第。

 けれど、セミナーに出掛けたことで、他にも小さな起業を考えている人たちに出会って、前日の失敗体験について聞いてもらえて、「自転車の乗り始めと同じで、そりゃコケることもありますよ」とか「具体的に動き出してるだけですごいじゃないですか!」とか何とか言ってもらえて、エネルギー充電もして帰ってきた。

 その夜は久しぶりに眠れず、眠剤を服用したけど消化しきれない話がぐるぐると頭をめぐって眠れなかった。で、次の日、眠れぬ時間に考えたことをパソコンにまとめた。

 う~ん。やっぱりこれじゃ売れないな、とさらに凹む。

 で、さらに一晩寝かせてみたら、なんと新しいアイデアが湧いてきた。

 キタ~!!!

 小さい起業において大切なことは、新しいアイデアや仕組みではなく、それまでの経験と人脈だ、と講師は話していた。まあ、当たり前といえば当たり前なのだけれど。で、その上で、自分が日ごろから個別に頼まれてきたことの中にビジネスのヒントがあると話をしていたのを思い出した。それが自分の強みなのだ、と。
 自分の頭の中で考える“自分の強み”ではなく、外部の人間から実際に求められていることこそが“お金になる強み”ということ。

 その文脈で考えて気がついたこと。
 実は今月から夫がもう一つ別のアルバイトを始めたのだけれど、先月から始めたアルバイトと併せて考えてみると、どちらもその事業の本業のお手伝いというよりも、夫にコンサルタント的な視点でのアドバイスを求めているな、と夫の話を聞いていて思った。

 先に始めた一人会社に手伝いに行くアルバイトでは、その会社の職員増員計画の一環で就業規則作成の相談を受け、今月から始まった小規模事業所では同じく職員求人や監査準備の相談、監督的なことを求められている。

 そうか、そこに夫が必要とされる仕事があるんだな。

 一人会社や小規模の事業所には、これまで私たちが勤務していた大きな組織では当たり前に存在していた人事部門がないわけで、給与体系や組織内教育、求人といったあたりのシステム作りの実務、もしくは相談できる外部の人間を必要としていて、それは長年、現場で働き、労働組合の幹部をし、新しい部門を立ち上げ、管理職まで経験した夫には造作のない仕事なのだ。
 おまけに夫は全国組織の研修担当でもあったので、組織内研修の講師を務めることもできる。こういうことを総称して、コンサルタント業務というのではないか?と、はたと気がついた。

 しかも、退職した後、夫は「支援者の支援がしたい」、「後進を育てたい」と言っていたのだから、まさに需要と供給が一致する。

 これまで私が温めてきたビジネスアイデアは社会課題を解決する系のもので、「世の中にあったらいいな」と自分が感じるものだった。それはどちらかというと、障害のある人たちにとって有益になるものなのだけれど、事業所の宣伝(PR)になるとはいえ、その社会貢献にお金を出してくれる事業所がどれくらいいるだろうか、と見積もっては凹んできた。
 冒頭に述べた通り、始めたはいいけど、やればやるだけ赤字になるようでは継続できず、結局、志のあるスポンサーに迷惑をかけるだけだからだ。

 けれど、夫がすでに世の中から求められているコンサルティング的な仕事で十分な収益が得られるとなると、私のビジネスアイデアが薄利であっても生活と事業の継続が可能になる。

 夫は少し前から社会保険労務士の資格を取ると言い出していて、そのことと今回の自分の思いつきが結びついた。夫自身、働き出して、きっとそのことに薄っすら気がついていたのだろう。

 このアイデアもまた実現するかどうかは、これから精査しなければならないけど、またひとつ新しい光が見えてきた気がする。夫がアルバイトを始めたこと、私がインタビューリサーチに失敗したこと、セミナーに参加したこと、そのどれもが私たちを自由にしてくれている。「ひとつのアイデアに固執しないで」と言われている気がする。

 つねづね学ぶことは自由になることだと思ってきたけれど、またその経験がひとつ増えたな。
そう思った次第。

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