マガジンのカバー画像

26
昔、書いていた作品を少しずつ再掲します。気が向けば、新作もUPするかもしれません。
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

毒リンゴ

毒リンゴ

望んでもいないのに
お婆さんのふりした誰かは
毒リンゴを持って あなたを訪ねてくるだろう

そして
あなたは その訪問も そのリンゴも
拒否することはできない

なぜなら
その人は お婆さんのふりをしているから
あなたがその嘘も 毒リンゴも 見抜くことは
ほぼ不可能なのだ

だから
あなたは それを口にしてしまう

口にしてはじめて それが毒リンゴであることと
自分が受けた仕打ちを知る

身体の中

もっとみる
君の繊細さ

君の繊細さ

君の繊細さは 君の弱さ
けれど
君の繊細さは 君の武器でもある

それを君は時々ふりまわして
「お前らは鈍感だから分かんないんだよ」となじる

君の剣は両刃だから
ふりまわすと君まで怪我をしてしまう

そうしておいて
君はその怪我まで僕らの責任にするんだ
「お前らのせいでこのザマだ」と言い捨てて

違うよ それは
君は君の剣で 自分を切ってるんだ

そして君は血をダラダラ流しながら
「見て。かわい

もっとみる
I am proud of you.

I am proud of you.

私はあなたのすべてを知らない
けれど あなたを丸ごと信じることができる

あなたは悪くない
細かい事情を知らなくても きっぱりとそう言い切れる

あなたの善きところだけじゃなく 弱くて情けないところも知っている
けれど あなたを丸ごと信じることができる

あなたは悪くない
誰がなんと言おうと きっぱりとそう言い切れる

あなたを丸ごと信じること

それが私にできる 唯一の“あなたを守る”やり方

もっとみる
大丈夫だよ

大丈夫だよ

大丈夫だよって 言ってほしい
それが甘えだと 分かっていても

他の誰でもない あなたに
大丈夫だよって 言ってもらえるだけで

向かい風にも顔をあげて まっすぐ歩いていけるような
かじかんだ手でも 凍てついたドアを開けられるような
そんな気持ちになれるはず

いまから
あなたにすべてを話すから
大丈夫だよって 言ってくれる?

新しい朝に

まどろみの中で 僕は傷付く
昨日と同じ場所で 目を覚ましたことに

夢を見る前の僕は もうここにはいないのに
僕のカラダは 昨日の僕と同じ形のくぼみを作っていた

僕は夢を見ていた とても長い夢を 
あまりにも甘くて 心地よい夢を

それがいつかは醒める夢だと知りながら

気が付けば ずいぶん長い時間が経ってしまった
これが夢だと忘れてしまうくらいに

けれど いつしか朝が来て 夢は突然終わった

もっとみる
終わりが切ないのは

終わりが切ないのは

一日の終わりが切ないのは
夏の終わりが切ないのは
恋の終わりが切ないのは

まだ何かすることがあったような気がするから
まだできることがあったような気がするから

どんなことでも 始まりがあれば 終わりはやって来る

終わりが切ないのは 楽しかった証拠
苦しくつらいだけなら 終わりはホッとするはず

始まりは終わり 終わりは始まり 
終わりが切ないのは きっと 生きている証拠

奪取

奪取

考えるスピードを
現実が追い越してく

今さら成長痛でもないけれど
こころはミシミシと軋む音を立ててる

こんな時は
どうすればいい

手札を切る順番とタイミング
間違えれば溺死してしまいそう

うまく泳ぎ切るには
どうすればいい

正解が分からないまま
解答ボタン押すみたいに
自分の頭のてっぺん
何度も押してみる

時間はまだある
予想していたよりも短いけれど

タイムリミットのゴングが鳴るまで

もっとみる
忘れないでいよう。

忘れないでいよう。

“忘れられない”のではなく 忘れないでいよう

あなたというひとのことを
あなたというひとが くれたことを
やさしいことばも まなざしも しぐさも
しりたくなかった過去や あやまちや うそも
わたしに与えた傷も

“忘れられない”のではなく 忘れないでいよう

あなたのことを ゆるすために
あなたをえらんだ わたしをゆるすために

“忘れられない”は 未練や憎しみと隣りあわせ
ならば わたしはゆる

もっとみる
胸に灯すキャンドル

胸に灯すキャンドル

気持ちが届いて 何かが通じた瞬間というのは
何にもまして うれしい

こころが あったかくなる

気持ちが届かず 何も通じないというのは
何にもまして かなしい

こころが しわしわになる

世の中 いいことばかりじゃないし
世の中 わるいことばかりじゃない

生きているのは 楽しいことばかりじゃないし
生きているのは つらいことばかりじゃない

わかってはいるけど
きょうも あなたの胸に 何かを

もっとみる
最後ん砦

最後ん砦

僕のこころは ヤワなんです
君が思っているよりも ずっと

僕のこころは ヤワなんです
僕が思っているよりも ずっと

だから どうかお願いします

土足で踏み込むのはよしてください
僕の最後ん砦に

僕だって間違いはする
君のことを知らないうちに傷つけたりもしているだろう

でも 最後ん砦だけは
そこだけは 触れないようにと心がけているんです

だから 君にもお願いします

なるべく そっとしと

もっとみる
雨の中を歩く

雨の中を歩く

雨の中 傘をさして歩いた

こんなところを歩くことになったのは
間違いなく 僕の選択ではあったけれど
ここが あの森だったらと
ついつい 想像してしまう

もしも ここがあの森だったなら
たくさんの木々が ひしめき合い
それぞれが伸ばした両腕の下で
僕は傘をさす必要もなく
この雨からも守られて
自由に歩き回ることができただろう

けれど ここはあの森ではない
あの森を出ていくことを決めたのは
他な

もっとみる
ともに旅する時間

ともに旅する時間

私たちはお互いに
笹の小舟に乗っているから

ともに旅する時間は
ほんの束の間

いつしか互いの舟は
違う流れに沿って走りだし
離ればなれに流れてゆく

どれだけ苛立たされる縁でも
どれだけ名残惜しい縁でも

永遠のように続くと思っていても
いつ相手の舟を見失うかなんて
誰にも分からない

けれど
私たちはそのことを時々忘れる

わざと忘れようとする

愛を表現することをためらっている時間も
腹立

もっとみる
絶望的な闇と希望の光

絶望的な闇と希望の光

僕が月を見上げて 幸福な気持ちに浸っている時
どこかで
君は同じ月を見上げて ひとりで泣いているかもしれない
そう思うと 僕はとてもせつなくなる

君が虫の音色に耳を澄ませて 楽しい空想をしている時
どこかで
僕は同じ音色に耳を澄ませて やりきれない気分になっているかもしれない
そう思うと 僕はたちまち途方にくれる

どれだけ君を理解しようとも
どれだけ君と一緒にいようとも
僕の孤独はけっして君の

もっとみる
愛しい世界

愛しい世界

そう せつないんだ
生きていることはいつだって
せつなくて 不自由で くるしくて
不器用で みじめで 嫌になって
でも だからこそ
僕たちはこころ寄せようとする

どれだけ寄り添ったって
理解しきれない
キミのこころに
もどかしさといらだちとかなしみを
感じながら

どれだけ言葉にしたって
伝えきれない 僕のこころに
情けなさと足りなさと弱さを
感じながら

そう せつないんだ
生きていることはい

もっとみる