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読書|何者

何年か前の就職活動の記憶がヒリヒリを思い出される。あの頃の胸の痛みは、まだまだ健在だ。

就職活動を控えた5名が集まるアパートの一室は、同志のように見えて、全員自分の胸の内は隠しているような緊迫感がありました。

ここぞとばかりに経歴を熱く語る理香や、個性で就職活動からはみ出そうとする隆良は、確かに痛く感じるものがあります。

特に、失敗を自分のものと認めたくないがために、人には夢語りを気持ちよくする隆良は、見ていてモヤモヤする部分が。

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。
これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。
自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。
何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。
百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって。

p216

ぐはっ。自分にも朝井リョウの言葉が刺さります。創作物や知識だって、他の人に触れなければそれ以上のものになりません。

私は自分の持っているモノの、あたため癖があります。自信がないから、他人の目が気になるから、中途半端なものを出したくないから。

要は、怖いんですよね。

自分の中のものが、外の世界に出たときに、今まで通りの形を保てなくなりそうで。でも、守り続けていては、自分が届けられる価値が埋もれてしまいます。

自己肯定感を上げるモノが、誰かのために届るモノになったら、評価は下されるけれど、幸せや感動の範囲は広がるかもしれない。

何者を読んで、外に向かう意思が強まりました。noteも自分の中から飛び出る世界になるので、これからも程よく続けていきたいです。




朝井リョウさんの読書記録はこちらです。




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