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01】デイヴィッド・ホックニーさんと日本庭園




01. David Hockney and Japanese Zen Garden.
デイヴィッド・ホックニーさんと日本庭園



はじめに


私は、西洋の空気を織りまぜて見る日本庭園が好きだ。日本庭園は、国内ではあまり気に留めてもらえないものだが、海外からはとても注目されている。Diorやスティーブ・ジョブズをはじめとして、多くのデザイナーや起業家のインスピレーションとなってきた。

西洋の空気を織りまぜてというのも、
デザインを学んだ私は、逆輸入的に、海外のデザイナーたちのストーリーや文脈のなかで「日本庭園」というものを感じてきた。

海外や彼らがどんなふうにこの日本庭園の世界観を語り、なにがクールだと言い、どう解釈し、どんなふうに彼らの創作に影響を与えたのか。


そんなふうにして、外から日本庭園が何者なのか感じるのが好きなのだ。

今年は、その少しためてきたものを少しずつアウトプットしてみたい。日本庭園への触れかたの幅が緩く広がればいいなと思うのと、私自身もこの探求を深めたいと思っているからだ。
そして、造園や建築だけでなく、自分と同じようにアートや美術・哲学が好きな人もっと触れたら楽しい世界だと信じているからだ。



01. デイヴィッド・ホックニーさんと日本庭園


そんな第一弾に取り上げるのは、
David Hockney | デイヴィッド・ホックニーと日本庭園。


昨年、東京都現代美術館で大きな展覧会が行われたので、きっと知っている人もたくさんいるはず。彼の愛情ある日常へのまなざしと何歳になっても、描くことへ探求を忘れない姿に心惹かれてしまう。

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/hockney/index.html


デイヴィッド・ホックニー

1937年イングランド北部生まれで、今もなんと現役で86歳(!)。今も現役で現代美術を第一線で活躍するアーティスト。彼の通底する探究は、目の前の世界を「どのように見るのか」。見ることの本質を明らかにするための手段が絵画なんだという。


展覧会の様子。春の芽生えのような優しいエネルギーとともにある人生に触れられて心が色彩で溢れる。


そのなかで、
彼と日本庭園にまつわる作品があったのでこちらを紹介したい。

龍安寺の石庭を歩く 1983年2月、京都
Walking in the Zen Garden at the Ryoanji Temple,Kyoto, Feb.1983

チャーミングな姿のディヴィッドさん(パンフ)と展覧会図録より

この作品は、京都の龍安寺の石庭を訪れ、100枚以上の写真を貼り合わせたフォトコラージュの作品。石庭を直角で表すことによって、写真の持つ線遠近法(近くが大きく、遠くが小さく見えるというような)の制限から逃れ、生きている人間の視覚体験を再現。
画面下部に見える作家本人の足元は、彼が移動しながらシャッターを切り続けていたことを示すとともに、作品の内側に入り込むことを鑑賞者に促している。

作品について(図録を参考)


この作品を通して感じることは、そっと歩く足もとの様子からうかがえる
見えない境界への向き合いと動く作家(鑑賞者)の視点

  1. 見えない境界

  2. 画面のなかで動く作家(鑑賞者)の視点


この2つのキーワードは、
日本文化の持つ「曖昧な境界」や、絵巻物などに代表される「動く視点」にもつながってくる。

こうして、彼の作品を通して見ると、

彼のユーモアとヒューマン的な石庭への関わりが微笑みとともに
うっすらと彼によって抽象化された日本文化が浮かび上がってくる気がした。


日本庭園には絵画的な要素や、見る者が主体として動き、一歩一歩と歩く行為のなかで庭の世界観に入っていく感覚がある。


それが視覚化されたような世界観である。

図録より



ホックニーさんが歩き、移動していく。
そしてその彼の視点を鑑賞者の私たちは追う。


とってもチャーミングなホックニーさんに深いリスペクトと共感です。


彼の通底の探求。
「目の前の世界を〈どのように見るのか〉」

冬の龍安寺(京都)



◆お庭について
龍安寺石庭(京都)

【Instagram】 https://www.instagram.com/hanako_kono/


次回はまた少し違った視点で書きたいと思います。✏️

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