アンスクールを紐解く⑥ゲーム編(その4;次男A)
次男Aは2008年生まれ、現在13歳。
次男A ....
それはそれはなんとも物静かな、いつも不安げで。。。声はエルモみたいで本当に可愛らしかった。。。2歳の時に通ったモンテッソーリのプレスクールでは笑い声さえも上げない大人しい子でした。
私たちは当時香港と東京を一年おきに行ったり来たりしていました。好きでそうしていたわけではなく香港と東京の学歴競争、長男Jの(まだ知らなかった)識字障害、言語発達の遅れなどで我々の意思とは関係なく一つの学校に在籍するのが難しかったからです。
次男Aは大人しく、聞き分けもよく従順だったので転校を重ねても大丈夫だと思っていました。私自身が帰国子女ということもあって転校や国を変えるのは大変だけれどやがては慣れると考えていました。
2歳か3歳の時のハロウィーンのことです。息子Aはスパイダーマンのコスチュームを着ることに決めたました。その日から1年以上、スパイダーマンかスーパーマンの衣装を脱ぐことはありませんでした。夏には半袖半ズボンのコスチュームを何着か買い、冬は長袖長ズボンのコスチュームを買って寒いから裏地を縫い付けました。日中用とパジャマとして着用していました。
このスーパーマン・コスチュームを卒業する頃、次男は否定するように首を横に振るチックを発症します。程なくして石畳、コンクリートの切れ目、タイル、目地の部分を歩けなくなり常につま先歩きをするようになりました。Tシャツなども必ずズボン・インで寝ていても途中で起きてシャツをズボンに入れてました。Aの不安症がうなぎのぼりに悪化していきました。
時を同じくして長男Jは不登校になり、三男は登園拒否の前兆を見せ始め私はもうどうすればいいか分かりませんでした。何をどう調整したり変えればいいのか分からないので思い切って全てにストップをかけることにしました。学校に行くのをやめ、ホームスクール開始。そして2年弱でアンスクーリング開始!
次男Aのゲーム・YouTube変遷は三男Tとは大きく違いました。Aはアンスクーリングを始める頃までテレビのつけ方も知らず、誰かがつけてくれるまでじーっと座って待ってました。iPadは持っていたのでAngry Birdsとかマインクラフト、YouTubeに使っていました。
次男Aは当時7歳頃で彼は動物が好きで色々な動物に関して動画を見ていました。それぞれの生態、種類、取り巻く環境、直面している危機、噛む力などの情報を2−3年仕入れ続けました。
AがYouTubeで得た知識や技能は以下の通り;
調査力
分析力
比較能力
情報の正誤確認
地理
歴史
生物学
生物学で使われる数学的概念
進化論
読解力
語彙の増加
集中力
説明力
要約力
動画制作能力
映像編集能力
音声編集能力
倫理観
YouTubeのアルゴリズム理解
NPO・NGOの機能や役割
動物の虐待や違法な狩猟
家畜の置かれている環境や形態
などなど
iPadを与えゲームやYouTubeに規制をかけなかった以外、私が率先して教えたことは何一つありません。私がやったことといえばAの情熱に興味を示し、興味をサポートし、展示会や本の紹介推薦くらいだったと思います。
アンスクーリングをし、ゲームやYouTubeをサポートしたことでAが得た最大のものは「自信」です。彼が学んだことは100%彼の功績です。Aの努力と継続力の賜物です。誰からも強要されることなく2−3年一つのことに没頭できた結果、Aは莫大な自信を身に付けました。クマ、イヌ、ネコ科、クジラのことで周りには自分より知識を持っている人はあまりいないと理解した頃にチックはなくなり、普通に歩行もできるようになりました。
子供が自分自身の力で取得した自信というのはその後何かを新しく学びたいと思ったとき、挑戦や困難に立ち向かえる原動力となります。Aは力を入れると決意したものに関しての知識なら数ヶ月でそれなりのレベルで習得する集中力と研究力があります。そして知識は日々の積み重ねであることを知ります。
A(当時10歳)は2018年から自分のYouTubeチャンネルを持っています。初動画は一コマずつおもちゃを動かす10秒程度のものでした。Aのチャンネルは当初動物の比較や事実についてでした。ダッチ・シェパードについての動画は7万6000ビューあるみたいです。YouTubeを通して自分で動画の作り方を学びました。5分の動画作成のために編集作業を何時間も費やさなければならないことも知ります。著作権や出典先なども表示し動画の倫理観も学びました。私のブログが7万回以上読まれる日が来るのだろうかと考えると、すごいなと思います。
Aは自分の経験から自分がその気になって努力さえすれば大抵のことはできるようになると体感と経験から学びました。あんなに不安気でいつも怯えていた子が自分の人生は自分次第であり、よっぽどのことでない限り道が閉ざされても違った視点で道を切り開くことができると理解しました。
彼は一旦何かを突き詰めて満足すれば次の興味に熱中することに躊躇しません。Aが先日言ってたことです。「人生はいつも変化してるから精一杯努力をしながら適応することが大切だ。」と。。。現在13歳、親ながら立派だなと思います。
現在のAの興味の対象はパソコンです。PCゲームが好きでパソコンのパフォーマンスにこだわりを持ち始めました。一から自分の手で作ることに興味はないけれど理想のパソコンに入れるパーツにこだわりがあるみたいです。この一年ほど、Aは「こういうものがあったらいいのに」とよく言い、エンジニアリングかコンピューター・サイエンスを学べば自分の好きなように色々作れるかもしれないと言っています。
Aはどんな目標であれ意を決したら相当いいラインをいくんだろうなぁ、と客観的に思います。
そうそう、物静かだったAはかつての面影は全くなく非常に闊達でユーモアのセンスもドライで、頭の回転がいいから議論で勝てるものは家族内にはいません。今では13歳ということもありますが「この子を守ってあげなきゃ」と思うことはちっともありません。
読者の皆さんも、よーーーく考えてみるとゲームと動画から多くのことを学ばれたのではないでしょうか?
次回は長男Jについて。