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‘すぺしゃる’の向こう側 (21) 地上絵

愛を探しに出た ぼくとりゅう。旅の向こうに もっと大切なものが あった。本当の幸せを手に入れる方法を 見つけた ぼくの冒険物語。

21)地上絵
久しぶりに会うりゅうのきゅるるは、たいへん上機嫌だった。一緒に飛びながら、首をゆらして、リズムをとっていた。リズムにあわせて、ときどき、火を噴きながら。空から、下を見ていると、大きな原っぱに、何か、面白い絵が描いてあった。よく見ると、せっせと線を描いている人が小さく見えた。面白そうだから、りゅうに声をかけて、降りてみた。

「こんにちは。」
「おお、こんにちは。」
ぼくを見た目の大きい、ひげもじゃのおじさんは、長い髪を後ろにくくって、ポニーテールみたいな頭をしていた。
「何、しているの?」
と聞いてみた。
「絵をかいているんだよ。」
「何の絵?」
ぼくは、空から見て、何なのか、わからなかったから、聞いてみた。
「わしも、わからん。こうして、ふんふんふんと、鼻歌を歌って、体が動くほうに、線を描いておる。だから、わしにも、何の絵か、わからん。」
「それって、楽しいの?」
「もちろん、描いているのが、面白いんじゃな。」
「何の絵か、できたときに、見るの?」
「いいや、大きすぎて見えんじゃろ。」
「ぼくといっしょに、りゅうに乗って、空から絵を見てみる?」
「おお、それも、面白そうじゃな。」

それで、ぼくと、おじさんは、りゅうに乗って、空高く舞い上がって、絵を見てみた。なんだか、何の形かわからない面白い絵だった。
「ほう、全体をみると、こんなふうなのか。面白いのう。」
おじさんは、楽しそうだった。

原っぱに降りてから、おじさんは、また絵を描き始めた。
「おじさん、絵ができあがるまで、ぼく、待ってようか。できあがったら、見たいでしょう?」
ぼくは、聞いてみた。そうしたら、おじさんは、
「いいや、いいよ。描いている今が楽しいから、描いておるだけじゃから。いつも、出来上がりを見ずに消して、次の絵を描いておるからなあ。」
「え?そうなの?」
「そうじゃ。描いておる時は、鼻歌がでてきて、楽しくて、楽しくて。」
「そうなんだ。」

しばらく、ぼくとりゅうは、おじさんを見ていたけれど、おじさんは、ずっと鼻歌を歌って、絵を描いていたから、なんだか、見ているのがつまらなくなってきた。だから、りゅうとぼくは、次のところへ飛んでいくことにした。

できあがりは、関係ないんだ…。

ぼくは、ちょっと、びっくりしながら、おじさんのもとを後にした。

つづく…



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