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新しい扉を開くのは

【文字数:約2,100文字】

 先日に他の方の記事にて、互いにやり取りのあるユーザーの方を映画「モンスターズ・インク」の主人公、マイクとサリーのようだとコメントで書いた。

 ↑ が該当する記事で、↓ はマイク or サリー。

 その週末の金曜ロードシネマクラブにて、「モンスターズ・インク」が放送され、先のやり取りもあって視聴してみようと思った。

 おおよその内容は覚えていたけれど、人間の世界につながる扉から現われたモンスターたちが、子供の悲鳴から生活に必要なエネルギーを得る、という土台にあたる部分を忘れていた。

 物語の序盤にて、モンスターたちの世界ではエネルギー危機が叫ばれており、その解決策として強硬な手段に出る者が現れる。

 ここでは結末に関して明言を避けるとして、同作を観終えた私はエネルギー問題が倫理を踏み越える理由になり、それは現在も続くウクナイナ戦争とも関連があるように思えた。

 本稿は映画のように楽しい内容ではないため、そうしたものを求めている方には読むことをオススメしない。

 そして引用させていただいた記事について、文章による言及だけに留めるべきかとも考えたが、どちらも目を通してもらえたらと考えて今の形とした。

 本稿は専門家でもない個人による私見であり、マイク or サリー、そして老婆の御二方には少しの関係もないことを、ここに明記しておく。

 ◇

 映画「モンスターズ・インク」のタイトルは会社名であり、子供の悲鳴からエネルギー得ることにより、モンスターたちの世界を豊かにした巨大企業として描かれている。

 ここでいったん現実の世界に目を移す。

 石油や天然ガスといったエネルギー資源を握っていることで、価格が高騰すればするほど生産国の財政は潤う。

 供給を減らす、もしくは絶つと脅せば相手は従う他なく、欧州連合のEUは先月に天然ガスの使用量について、2023年春までに15%削減することで合意した。

 先の第二次世界大戦においても、生きるために必要なものが不足した結果、その不満が民主的にファシズムを誕生させたと聞く。

 先日に観た歴史番組にてアドルフ・ヒトラーは、100年後にファシズムと同様のものが蘇るだろう、と不吉な予言を遺したとされる。

 それと同じ轍を踏んでいるとは思いたくないけれど、進行形で黙らされている現状は、「モンスターズ・インク」の悪役のように強硬でなくとも、追認しているのと変わらない気がする。

 同作にも強硬な手段に対して間接的に加わっているキャラが登場し、強硬策を主導するキャラの言いなりとして描かれている。

 彼らはモンスターだけれども、はたして私たちとは違うのだと言い切れるだろうか。

 ◇

 ウクライナ戦争の開戦から1ヶ月くらい経った頃だったと思う。

 ロシア在住の夫婦にインタビューした番組にて、彼らが次のように語っていた。

「今の政治体制を放置した私たちにも、責任があるのかもしれない」

 発言の細部は異なっているだろうけれど、おおよその趣旨に違いないはずだ。

 もはやエネルギー資源なしで私たちの生活は成り立たず、こうして好き勝手なことを書くこともできなくなり、暑さや寒さによって新たな不幸が生み出されていくだろう。

 実際、先日に聴いたラジオ番組にてイギリス在住のライター、ブレイディみかこさんが、ある77歳の女性の話をしていた。

 女性は光熱費の上昇による出費を抑えるため、高齢者が使えるフリーパスで1日バスに乗り続けているという。

 これに対して辞任を決めたイギリスのジョンソン首相は、フリーパスを導入したのは自分の功績だと誇ったそうな。

 その話を寄稿した新聞を読んでいたこともあって、強く印象に残っただけでなく、放置あるいは追認も悪に成り得るのだと思った。

 ◇

 ここまで書いておきながら自分が何をしてきたかと言えば、先日にあった選挙で投票をするくらいだ。

 デモに参加するだとかNPOに協力するといった、目に見える積極的な関わりはしていない。

 むしろ作品や他の方を貶めているのではと思いつつ、どうにも記事として形にしたくなった。

 「モンスターズ・インク」の終盤にて、子供を怖がらせて活躍してきたサリーは、自らが子供に向けていた姿を画像で見て、とても驚いたような表情をする。

 会社そして世界のために頑張ってきたけれど、子供から自分がどう見えているのか気がつけなかったのかもしれない。

 こうして記事に書く行為は、どこかサリーの気づきと似ているように思う。

 ◇

 同作のエンディングでは子供を怖がらせるのでなく、別の方法でエネルギーを得るようになった。

 それにより、これまでサリーのアシスタントだったマイクが活躍するようになっただけでなく、いわばエネルギー革命が起こったようなものだろうか。

 巨体のサリーと小柄なマイク。

 それぞれ得意なことは違うけれど、彼らが協力して新たな扉を開く姿こそ、私たちも見習うべき姿勢なのかもしれない。






 謝辞

 記事を引用させていただいた老婆の日常茶飯事さん、Loris_M.さん

 拙い本稿にて紹介してしまい申し訳ありません。しかしながら偶然の出会いが同作で革命をもたらしたように、御二人という新たな扉が私の意識に変化を与えています。

 これからも御二方が息災であることを願いつつ、モンスターのようにムクムクしながら感謝を申し上げます。


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