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吉岡健治シェフの生き方

ー食にたずさわる人の生き方に触れることで、再び、自分や他者、世界の広がりを感じるー
【インタビューマガジン・Rinfinity】

第2回の2023年4月は、名古屋市東区代官町のフレンチボン吉(ボンキチ)・吉岡健治シェフにお話をお伺いしました。

名古屋市東区代官町にあるフレンチ「ボン吉(ボンキチ)」は、大通りから少し入った閑静な街並みの中にあり、青い外観が目印のお店です。夫婦二人で営む当店の扉を開くと、そこには小さくも温かな空間が広がります。

(ボン吉HPより)

これまでのキャリア

―これまでのキャリアについて教えてください。

「出身は神奈川で、20歳までは地元にいました。
東京に引っ越して、最初は渋谷の豆腐料理屋さんで働いて、そのあと小さなフランス料理店やBLUE NOTEの姉妹店で働きました。
それから1年フランスへ行って、帰ってきたら『そろそろ自分でシェフをやってみたいな』と思って、秋葉原の小さなビストロでシェフとして働きました。
そこの会社は複数店舗を運営していたので、新店の立ち上げなども経験しましたね。
『独立しよう』と思ったとき、どの場所でやるか悩んだのですが、妻の地元が愛知で。
名古屋に1回遊びに来たときに面白かったので、今の場所に決めました。」

料理の道へ進むきっかけ

―料理の道へ進もうと決められたきっかけは何だったのでしょうか?

「昔から料理は好きだったんですけど、19、20くらいのときに地元のショットバーでアルバイトする機会があって。
『バーテンダーってかっこいいな』と思って、そこから飲食が好きになりました。
東京に出たきっかけも、『バーテンダーになりたい』という思いがあったんです。
『バーテンダーやるなら、気の利いたおつまみがつくれると強いんじゃないか』と思って、料理を始めて、そうしたらもうずっと料理の道で来ちゃった、という感じですね。」

フランスでのこと

―そうだったんですね。1年フランスにも行かれたとのことでしたが、そのときは、どのような気持ちでしたか?

「行くときはワクワクしてましたよ。
すごいワクワクしてましたね。
向こうの空港に着いた瞬間に、『あ、やっぱり外国なんだ』と思って。
水を買うにしてもどのお金を使っていいのかわからない、タクシーで目的地がうまく伝えられないとか。
口座を作るのに銀行をたらい回しにされたことがあって、その時はもう結構嫌になってましたね。(笑)

働いていたレストランでもあんまりいい思い出はないですかね。
言葉が喋れないから、若い子にも馬鹿にされちゃって。
『腕で見せてやる』と思ったんですけど、喋れないと全然言うこと聞かないし、納得してもらえなかったんですよね。
シェフは日本人だったんですけど、だからこそ日本人びいきしないようにしてて、フランス人よりなんですよ。
どう考えても俺のが言ってること正しいのに、怒られるみたいな。
なんとも理不尽な仕打ちを受けた感じはありますね。
でも、今でも印象に残っているシェフは、フランスで出会ったそのシェフですね。
まあ、本当に手が早くてびっくりしましたね。
いまだに『ああいう動きができるようになりたいな』と思っていますね。
やっぱりフランスのレストランは席数が多いので、普段80席、夏場だとテラス席が出るので100~120席、その満席のメインを1人でやってるんですよ。
その時に見たシェフの動きは、今でも自分に根付いているというか、印象に残っています。」

現在

―独立されて、今はどのような気持ちで料理をされていますか?

「独立する前にシェフとして任されて料理を作る時の感覚に似ているところはありますね。
結局、『こういう風にしよう』と思ってやるけど、まあ思った通りにはいかないので、絶対手探りになるわけですよ。
それで、お客さんの感じとか求めてるものとか、色々考えながらやるじゃないですか。
なので、いまだに結局手探りでやってるような感じですね。」

フランス留学、新店の立ち上げ、独立。
手探りに、でも着実にご自身のキャリアを歩まれてきた吉岡シェフ。
こんな質問もしてみました。

どのあたりを見つめているか

―過去のことを糧にして生きている人、未来を描いて生きていく人、色んな人がいると思うのですが、吉岡シェフはどのあたりを見て生きてらっしゃいますか?

「そうですね。
見てないんでしょうね、たぶんね。
元々そんなに真面目な性格でもない気がするんですよね。
でも、やっぱり変なことはやりたくないですし。
『ちょうどよくやりたい』っていうのはありますね。
例えば、よく思うんですけど、うなぎ屋さん行ってうな丼食べたいと思って、全然違うものが出てきたらめっちゃ腹立つじゃないですか。(笑)
自分がイメージしてたものじゃないものが出てきた、みたいな。
フランス料理でも同じことが言えるんじゃないかな、って思いますね。
フランス料理の場合、アレンジを加えることが多いので。
それも全然ありはありだと思うんですけど、僕はどちらかと言ったら、お客さんに「うな丼」を出したいタイプ。
料理もサービスもですね。
お客さんとの距離感とかも、『ちょうどいい感じ』を目指したいなと思いますね。
楽しみにして行ったお店で、サービスが残念とかって、結構悲しいじゃないですか。
そういうことがないようにはしたいな、って。
そういう裏切らない感じを大切にしています。
そういうことばっかり考えてますね。」

吉岡シェフ、ありがとうございました!


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