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わたしに向いていること

目が覚めると、泣いていた。社会に必要とされたいと思っていた幼少期のわたしはまたしても両親の前に何もできずに立ちすくんでいる…。
そんな夢を見た。誰かの役に立ちたい、ただそれだけのことがこんなに難しいと感じたのはいつからだったのだろう。

先輩にまた注意を受ける。言いたいことだけ言い残して、彼女は息子の送り迎えで帰宅。指示されたよくわからない仕事をしていると、あっという間に定時を3時間すぎた。人も少なくなったオフィス内、小走りでバス停に向かうと、バスは予定時間を破って発車していた。テールライトの赤を追いかける気にはならず、肩から下を絶望がどっと襲った。周りにコンビニもなにもない自然だらけの職場で、また30分暇つぶしをしなければいけない。

ベンチに座りSNSを開くと、2ヶ月前まで一緒に働いていた同僚からのメッセージが届いていた。"How are you doing? I miss Japan and the office…" ほっこりして、一人で闘っている絶望と孤独が少し和らいだ。
"I'm good as usual…"と心の中でつぶやく。

わたしはきっと、社会に適合することに向いていない。言われた仕事に「なぜそれをやらなければならないのか」疑問をもってしまう。そして、その本音を守ってあげられない。いつもそうだ。本音であればあるほど、言葉にするのが難しくなって、ひとりになってしまう。

きっと私に向いているのは、社会から求められていないこと。社会という大きな何かではなくて、大切なあの人にメッセージするとか尊敬できる上司からの指摘にはお礼を言うこととかいつも会話しているお客さんが求めていることを理解することとか。

いつの間にか着いていた最寄駅。いつものスーパーでいつも通りビールと枝豆を買う。会計は基本的に交通系ICで支払うわたしに、見慣れたレジのお兄さんが何も言わずに支払い方法を切り替え、商品を近づけてきた。

わたしも、ただそこにいるだけの人に優しくあろうと思う。
わたしはわたしにも、ただここにいることを感謝しようと思う。

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