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Toby Fox/UNDERTALE SOUNDTRACKのアルバムをリピート再生で聴きながら

降り積もる雪。湧き上がるマグマ。無機質な建物。暗闇の道に光る星屑のような何か。暗く美しいお城。

耳を包むピアノの音を、脳で感じて、そして脳に作り出された私の世界は、瞼の裏で広がりをみせる。

色彩豊かな視界と、モノクロの世界に取り巻かれた私の前に広がる金色の花。色を持たないモンスターたち。動物でもヒトでも機械でもない彼らは、暗い闇の中で、少しの希望と、日常を手に暮らしている。

私はそこに少しの間お邪魔する。不可思議なその世界は、知っているような暖かさと、知らない冷たさと、どちらでもない柔らかさをもって、私を包む。

優しいピアノ、激しい電子音、暴れ回るスネア、いななくシンセサイザー、脳を揺さぶるベース、動き回る視界、入れ替わる世界、私。

入れ替わり立ち替わりに世界が現れて、その都度私が量産されていく。モニター越しに見る私を見る私。点在して存在する私。統一された意識の中で、産声をあげる私。

曲が変わる。私が生まれる。新たな世界に配置する。その配置された私を見るために、また私が生まれる。

曲が終わる。私が取り残される。古い世界に残留する。その残留された私を見捨てることなく、ただ私が増えていく。

優しい音色、妖しい音色、激しい音色。同じメロディでも、違う色を持つその世界。構成は似ているのに、空の色が違う。土の感触が異なる。現れるモンスターが変わる。温度が下がる。湿度が下がる。

寝っ転がって、統一された室温の中、音楽に飼い慣らされるように、イヤホンだけを頼りに、知っていて、知らない世界を飛び回る。

あぁ、もう少しでアルバムが終わってしまう。私の旅が終わってしまう。

旅の終わりを彩るように、跳ねるような、終わらせたくない旅を急かすような、そんな音楽が脳を揺さぶる。終わりが分かってしまう。終わることが分かってしまっているから、揺さぶられた脳で、私をまた生み出す。

最後の曲を待つように、そのタイミングで今までの私を統一させる為に、私は依代としての私を生み出す。

最後の曲になった。美しく響くピアノ。リバーブの効いた数フレーズ。「もう終わりだよ」と肩を叩くメロディ。

待ち受けている優しい光。

そしてリピートされるプレイリスト。

次はどんな景色を見ようか。

私は姿勢も変えず、またしても同じで違うループに残した私を頼りに、新しい旅に出る。

瞼の裏に広がる世界を。


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