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rina
2022年1月5日 21:26
薄暗い店内。隣からひっそりと聞こえる話し声。互いが互いの座席から、顔が見えないようにカーテンがかけられている。立った穂波の腰の辺りまであるカーテンは、座っている人たちの顔を上手に隠す。そこから漏れる声。甘く、暗く、空気を含んだ、ヒソヒソ声。周りを囲んだ、卵型のソファ。男女2人で座り、何かを話すための場所。流れている音楽は、アンビエント。定期的に響く、美しい音色。階段を昇り降りするピ
2021年7月3日 13:47
「お疲れ様」と、彼女はそう言って控え室に入ってくる。確かに私は疲れていた。彼女は疲れているはずなのにそんな素振りは見せなかった。少しぽってりとした唇を携えて私の前で笑う彼女は美しかった。遠く異国の石のようなキラキラした瞳を私に向けていて、私は硬直する。「ねぇ、どうしたの?」と、彼女は言って私の手首に指を這わせる。私は彼女を見ることができないまま、手首を触られている。あまりの冷たさに手を引きそう