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29歳、老いについて考える。

老いることは病気でもなんでもない「自然なこと」のはずなのに、なんで私は今、ドモホルンリンクルの無料お試しセットを頼もうとしているんだろう。

え、お母さん?

鏡に映った自分を見てちょっと引いた。
これまでは笑ったときにしか出なかったのに、どんなに真顔を作っても口をキュッと結んでもくっきり出ているほうれい線。自分ではない、「どっかで見たことある顔」がそこにある。顔のパーツが、ではない。シワのでき方が母親そっくりだ。

それまで薬局のプチプラ化粧水をバシャバシャ使っていたけど、私もそろそろ、何か手を打たなければいけない年齢になってきたのかもしれない。

それですぐ思い浮かんだのが「ドモホルンリンクル無料お試しセット」だったのである。
こちとら物心ついたときから二十余年、ずーっとテレビコマーシャルの「0120-444-444ゼロイチニイゼロ、ヨンヨンヨンヨンヨンヨン」の歌を聞いて育ってきた。
ダイレクトマーケティング、否、もはや刷り込み、洗脳に近い。
とうとうあれに頼るのか。頼るしかないのか。



老いるってどういうことだろう

「老いると良いこと」の中によく、「周りの目が気にならなくなる」というものがある。顔も髪も服も、周りにどう思われても良くなって、良い感じに適当になる。らしい。

私は悲しいかな、まだその領域には行けていない。
毎日いろんなメディアから「若さを保つには」的なメッセージをもらっているし、Youtubeの広告に至ってはほとんど美容エステ、ダイエット系のサプリ、脱毛で恋愛成功しちゃう系の話、エトセトラエトセトラ。
小学生の頃熱心に読んでいた進研ゼミの漫画よろしく、悩める女の子のめくるめくサクセスストーリー。


そりゃ老いは受け入れるよ。
夏木マリさんみたいに「年齢はただの記号」とか言いたいし、角野栄子さんみたいな真っ白ボブに大振りなピアスと赤いメガネで「ザ・可愛いおばあちゃん」になりたい。

若さにすがりたいわけじゃない。それなのに「早くそっちに行きたい」って言ったら怒られる気もする。「そのフェーズ」があることはわかっているし、自分がまだ「そのフェーズ」ではないことも分かっているって話。
ショートカットにした後の髪の毛とかもそうだけど、中途半端な時期が一番処理に困る。

何歳になったらこれも手放せるんだろうか。


他人のそれ

他人の老いには寛容だ。
父も母も私のツレもシワの深さが愛おしいし、芸能人が「劣化した」とか書かれているのを見る度に勝手に心が痛くなって擁護したくなる。(そして書かれている人は大抵年相応に思える)
一方で自分のシワに対しては敏感なのは、なんだか笑える話である。

なんでなのかを考えたけど、多分他の誰のためでもない。自分のために私は若々しく健康でありたいんだと思った。
朝、鏡を見て笑顔で「今日もええやん」って言ってあげたいし、化粧ノリが良い悪いとか考えなくて良い程度に毎日整っていたい。
自分がちゃんと自分を大事にしている証拠。自信を持つための一つの手段。

食べ物に気を遣う。水分を摂る。適度な運動をする。睡眠の質を高める。
特別なことは何もしない。人間らしい生活がきっと私をそういさせてくれる。

その生活がしたいだけなのに、メディアやSNSは人間が老いることを良しとしてくれない。あの手この手で「若々しくいたい」という欲求を刺激してポチりを誘導してきやがる。

なんて滑稽で簡単な生物。私。
なんて狡猾で巧妙な情報社会。



とまあグダグダ書いたけど、結局何が言いたいかでいくと、ドモホルンリンクル無料お試しセット、とうとう注文しちまったよ、って話。



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