「勉強したら怒られた」の図解
なんだか、不思議なタイトルになってしまいました。
勉強をしてたら褒められてもよいと思うのですが、実は、子供にとってこの「勉強したら怒られる」という図は割とあるあるだったりします。
例えば、塾に通って怒られる
成績がよくないから塾に通わせる、というのは理由として多くあげられます。
というより、大体の塾が成績アップを広告に載せていますから、普通はそうですよね。
私はここが、塾とその他の習い事の違いだと感じています。
サッカーやピアノなど、大体の習い事というのは、始めるときに子どもが「やってみたい」と言うかどうかを考慮しているのではないでしょうか。
けれど塾の場合は「このままじゃ成績がマズいよ、行かなきゃいけないよ」という親の話に、子どもも「そうかも…」と感じて、始めていることが多いと思います。
スタート時点のモチベーションが、大きく違うんですね。
私が見てきた生徒の中にも「宿題を全くやってこない」「授業に遅刻する」など、不真面目に見える態度が続いている子がいました。
その生徒に、どうして遅刻をしたのかを聞くと「ゲームをしていてうっかり遅れた」とのこと。
なら、塾の時間にアラームをセットするなど、対策をしてくれないかと聞くと「んー…」と、あまり乗り気ではない様子。
おそらくは塾へ行きたくないからゲームで現実逃避をしているのに、そんな声かけは無意味なんですよね。
この件は私の力不足も感じるものでしたが、例えばお医者さんに「病気を治すために飲んでください」と言われた薬を飲んでいないのに、病気が治らない、と言われてもお手上げなわけです。
さて、この生徒はどうして塾が嫌なんでしょう。
「怒られるから」ですね。
行きたいと言い出したわけでもない塾へ、したくもない勉強をさせられに頑張って行ったのに、「遅刻をした」、「宿題をしてない」と怒られるんです。嫌な思いをしながら、そのあとは授業を受けて勉強して、憂鬱な気持ちで帰る。
これが「勉強してるのに怒られる」の図です。
子供からすれば勉強を頑張ったのに、そんなことは当たり前だと褒められず、叱られた部分ばかりが残る。
やる気がないから怒られる
例えばサッカーを習っている子どもが、普段から頑張れる理由を考えると
・友達と一緒に楽しんでいる
・上達してきているのを感じている
などがあるかと思います。
勉強も同じ事ができればいいのですが、サッカーの嫌いな子が周りの楽しそうにしている子と一緒に楽しめない理由は一つ。
「上手にできないから」です。
私もスポーツはからっきしで、体育の授業はかなり苦痛なタイプでした(笑)
こっちは必死にやっていますが、体を動かすのが下手なものですから、上手な子の足を引っ張っているのがわかるのです。
(サッカーでパスを失敗してしまったら、シュートを外そうものなら、何を思われてしまうだろう。)
こうなるともう、よかれと思って上手な子が、私にパスをしてくれたりするのも「余計なことをしないでくださいな!」と心が叫んで体は萎縮してしまいます。
周りに何を言われなくても、自分が一番よくわかっていますから。
さて、勉強の話に戻ります。
周りの皆がノートをきちんととったり、問題をしっかり解いている教室で、自分だけが先生が何を言っているかわからない状況。
先生に当てられて、答えられなかったらどうしよう。宿題が解けない、わからない、どうしよう。
こんな風に困っているときに、「真面目に勉強しなさい」と言われたら。
……正直、やりたくないですよね!
最初はきっと頑張っていたはずなのに、いつの間にか差がついていることに気づくんです。
テストの点数が良い子、悪い子の違いに気づいたころに先生はきっと「もっと頑張りましょう」と言います。お母さんにテストの点数を見られて「アンタ何してるの!遊んでばっかりだからこんな点数とって!」なんて叱られたら…。
子供だからあるあるな場面かもしれませんが、例えば、サラリーマンが上司に「なんだこの業績は!遊んでばっかりいるからだろう!」なんて言われたらたまったものじゃありませんよね。
少し、心理学の話をしましょう。
「オペラント条件づけ」という言葉の話なのですが、すごく単純に解説すると
・行動の結果が「良いこと」だと、行動の頻度が増える。
・行動の結果が「悪いこと」だと、行動の頻度が減る。
という行動心理です。
テストで良い点が取れたらご褒美がある、だから頑張る、というやつですね。
上記のような勉強の苦手な子が、勉強に対して起こっている条件付けは、先ほど書いたように
「勉強をすると、怒られる」
という、行動の結果に悪いことが起こった状態になっています。
いやいや、勉強してないから成績が悪いんでしょう?と思われるかもしれません。
でも、学校(あるいは塾)にはちゃんと通っているんです。教室で授業を受けているんです。
でも、成績が悪いから怒られてしまう。すると、勉強に関わることに消極的になってしまう。
(全ての子どもに当てはまる話ではありませんが、見てきた中では陥りやすい状況だったと思います。)
勉強を頑張っても、まず学校でわからないんだから、意味がない。
勉強そのものが嫌なものに見えてくる。関わらないでおこう。
もちろん、ゲームや好きなものに逃げる現実逃避がよいことでないことも、子どもたちは知っています。
けれど子どもにとっては、
勉強を頑張る苦痛の後で、結局成績が伸びず怒られるのも、
ゲームを楽しんだ後で、勉強しなさいと怒られるのも、
結局は「怒られる」だけなんです。
結果が変わらないなら少しでも楽しいものに逃げるのも、ごく自然なことだと思いませんか。
やる気を出すには経験値
ある遅刻常習犯の生徒がいました。
その子を以前担当していた先生に話を聞くと「あの子はやる気がない」とハッキリ断言します。授業でも確かに、私の方を見ようとせず、周りの子と話をしようとばかりするのです。
私は、その子が初めて来た授業で言った「わからない」を掬い上げました。
すごく基本的な内容で、周りの他の子は知っていることかもしれません。隣の子にこっそり聞こうとしていたのを「先生に聞いてよ!」と、片っ端から食らい付いていきました。
そうすると少しずつ、その子は会話をしてくれるようになります。そこでようやく、その子の話を聞くことができました。
「周りがわかってる当たり前のことを質問するのが嫌」「わからないと言うと、先生がやる気がないと見なしてくるから嫌い」とその子は言いました。
最終的に、その子は勉強を頑張るようになりました。雑談も多くなりましたが、「話を聞いてくれる」と信頼してくれるからこそ、先生としての私の話も聞いてくれていたと思います。
前担当の先生は、その子の変わり様にとても驚いていましたが(笑)
やっぱり、どんな生徒も頑張りたい気持ちは持っているのだと思います。
けれど、誰にどう伝えればいいのか、わからなくて諦めている場合がほとんどで、周りもその状況を作ってしまっているようにも感じるのです。
信用できる大人がいる、というのは本当に大事だと思います。
やる気を出すには、当然本人の意思が必要です。
本人が勉強に対して、どう感じているのか。それを聞いてくれる大人がいることが、やる気の第一歩ではないでしょうか。
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