梅雨寒　【与太子話】

　まずいソフトクリームを食べたことがない。


　ソフトクリームはどこで食べてもいつもおいしい。

　ただ、正直なことを言ってしまうと、ソフトクリームは最初の三口までがすこぶるおいしくて、その後は味があまりよくわからなくなる。冷たくてやわらかいものをなめている、というだけになる。

　味覚は温度とも関係があるらしい。口に入れるものが冷たすぎたり熱すぎたりすると、味がわからなくなるそうだ。

　ソフトクリームで冷えた口の中が味を感じられる温度に回復するまで待っていたら、ソフトクリームが溶けてしまう。しかし、ソフトクリームが溶けないうちに食べてしまおうと慌てて口に運ぶと、味もそっけもなくなっていく。

　ソフトクリーム、よくよく考えてみるとちょっとせわしい食べ物なのだが、それでもなぜだか食べたくなる。

こちらはいつかのソフトクリーム。
談合坂サービスエリアにて。

　ここいら辺りはここ数日、梅雨寒が続いていて、とてもソフトクリームな天気ではない。

　おでんとか鍋とかが食べたい、そんな天気。

　天気予報は、寒いのは今日までで明日からはまた暑くなると言っている。

　この寒暖差に負けないためには、ぬるいビールと、水餃子を入れたキムチ鍋が必要だ。

　ソフトクリームではない。