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町中華 【俗談平話】


 駅から少し離れた住宅街に、小さな商店街がある。商店街の一角にその中華料理屋さんはあった。平日ランチも賑わっている人気店だった。地元の人に愛されていた、まさに。

 久しぶりに訪れたら、そのお店は閉店、なくなっていた。あんなに繁盛していたお店だったのに、と口惜しく思った。

 そのお店の跡地に、大阪王将がオープンしていた。


 大阪王将、冷凍餃子をよく食べている。水餃子、もちもちでおいしい。

 とはいえ、今日はあのお店の餃子とラーメンを食べると決めて来ていたから、どうしようか迷った。あのお店のラーメンも餃子ももう食べられないと思うと、足が素直に前へ出なかった。

 しばらくの間、店の外に出されていたメニュー表を恨めしく睨んでいた。



 昼時、腹は鳴る。



 仕方がない、今日はここで手を打つかと、しぶしぶ店に入った。


 ラーメン・チャーハン・餃子のセットを注文。お手並み拝見といく。


 待っている間、店内を見回した。以前はなかったカウンター席が設けられ、かつてのあのお店の面影はない。色調や雰囲気、まるで違う。
 ふと目がとまる。店の奥にあのお店の写真が掛けられていたのだ。そこには、あのお店が惜しまれつつ閉店したこと、新しくオープンしたこのお店があのお店のメニューを継承していく旨がつつと書かれていた。


 大阪王将はチェーン店、町中華の唯一無二の味を引き継いでいくとは。


大阪王将 ラーメンとチャーハンと餃子のセット。ガッツリ。

 ラーメンもチャーハンも、言うまでもなく餃子もおいしい。かつてのあのお店の味ではないけれど、これはこれでおいしい。




 かつてのあのお店を名残惜しく思いながら、また来るときは何を食べようかと楽しみを残し、私は店を出た。

かつてのあのお店のラーメンとチャーハンのセット。惜別。


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