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今夜も私はひとり生きる

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平成7年生まれバリキャリアラサー女の手記
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#エッセイ

002. 彼が死んだことが当たり前になった

002. 彼が死んだことが当たり前になった

推しが死んでから6年が経った。自殺だった。彼が死んでから、一瞬たりとも彼のことを考えなかった夜は多分ない。だけれど彼が死んだことを悲しんで、彼を想って涙を流した最後の夜がいつだったかは覚えていない。それくらい、彼が死んだことが、死んでいることが当たり前になってしまった。すでに彼の年齢は越した。彼のデビュー曲が年上の女性に対する叶わない恋を歌った曲だったから、2、3年前までは「私があなたより歳上にな

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001. 「肌が綺麗だね」なんて言わないで

001. 「肌が綺麗だね」なんて言わないで

「肌綺麗だよね。」ベッドやソファで私を後ろから抱き締めながら、そろそろキスを始めようと顔を覗き込んだタイミングで、大体の男はこのセリフを吐く。私は「えー、女の子みんな肌綺麗じゃん」なんて適当に返しながら、心の中では「肌綺麗だよね」を「肌が綺麗だよね」「肌は綺麗だよね」と勝手に変換し『やっぱり私って肌しか褒めることないんだな。』と現実を噛み締めている。健全な関係の男女の昼間の会話でこの褒め言葉が出て

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