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「リスク低」なのになぜ?欧米が鳥インフルエンザワクチンの準備を始めた理由

7月4日、アメリカで4例目となるヒトの鳥インフルエンザの感染が確認された。「鳥インフルエンザ」とはA(H1N1)型インフルエンザウイルスの俗称だ。ヒトが感染するのも鳥が感染するのとまったく同一のインフルエンザウイルスだが、ヒトが感染しても他の動物が感染しても「鳥」インフルエンザと呼ばれている。アメリカでは今年に入ってからこのA(H1N1)の感染が乳牛の間で拡大しており市販の牛乳の5つに1つから鳥インフルエンザウイルスが検出されるようになった。また感染した4名のうち3名が酪農家だった。
 
A(H5N1)は「抗病原性(強毒)」で、いったん流行を始めると一夜にして一帯の家禽がすべて死滅してしまう。ヒトや牛を含む哺乳類にも感染する能力を持つが、幸いにもヒトの上気道にあるレセプターは鳥インフルエンザウイルスに効率的に結合することはできない。つまり、ヒトへの感染能力は低い。また、ヒトからヒトへの感染例も報告がない。よって、米CDCは現在までのところ鳥インフルエンザのヒトへのリスクは「低い」としている。
 
かつて筆者がWHOの西太平洋事務局に勤務していた頃、鳥インフルエンザはアジアを中心に流行していた。稀だが人にも感染することから、次にパンデミックを起こす恐れがもっとも高いウイルスとして当時からマークされていた。

ただ、今年のアメリカでも流行では、アジアで流行していた頃とは明らかに異なる点が3つある。

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