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文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】

「文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】」はわたしが書くすべての記事を読みたいという方、定期購読で応援してくださる方向けです。執筆の舞台裏エピソードや医療関係者向けの特…
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記事一覧

独紙も注目!なぜいま日本では「人喰いバクテリア」が増えているのか

独「フランクフルター・アルゲマイン」紙が日本で劇症型溶血性レンサ球菌感染症(通称「人喰いバクテリア」)が増えていることを取り上げたのを受け、友人で同紙の記者のヒナク・ドレンナップが書いた微生物学者アンドレアス・ポドビエルスキー氏の取材記事を許可を得てご紹介します。 オリジナルの記事のリンク(ドイツ語)はこちらです。 「人喰いバクテリアについては」わたしが書いた記事もあるので、よかったら読んでみて下さい。 〇日本では今年、劇症型レンサ球菌感染症、いわゆる「人喰いバクテリア

ニワトコの花の黒パン

ドイツには夏至の前後の短い間、小さな白い花を咲かせるとびきりステキな木がある。 ニワトコ(Hollunder)だ。 日本で言うと沈丁花のような感じだろうか。甘い香りがして見上げると、小さな白い花の房をつけたニワトコの木が立っている。街路や庭、公園はもちろんのこと運河や湖沿いの森にもニワトコは立ち、可憐な花を咲かせる。 実はこのニワトコの花、レモンを浮かべた砂糖水に浸してやるとお酒になる。仕込み水を常温において3日、しゅわしゅわと泡が立ち始める。5日から1週間くらいしたら

歯医者で溺れかけるー「文系女医のリハビリ話」はじめました!

身体にメスを入れられること。その影響は、実際にメスを入れられてみないとわからないこともある。 3月末、顎にできた腫瘍の手術を受けて以降、食べたり話したりに少々支障が出ている。用は足りるが「元通り」とか「気にならない」といったレベルにはほど遠く、思わぬところで足元をすくわれる日々だ。 今回、足元をすくわれたのは歯医者。飴を食べていたら、口の中がじょりじょり言い出した。妙に割れやすい飴だと思ったが、じょりじょりを吐き出してみると飴のかけらと割れた詰め物のセラミックが混在してい

ウワサのハギス

今日は医学も科学も関係ない、スコットランドの「ハギス」という食べ物についての話です。 ハギスについては先日のラジオ「おはよう寺ちゃん」でも触れましたが、音声で説明を聞いてもどんな食べ物なのか想像が難しいのでは?と思い、写真を載せて説明を補足することにしました。この記事のカバー写真の黒いひき肉のように見えるのがハギスです。 ハギスとは羊の肺や肝臓と穀類、スパイスの腸詰で、「ハギスを食べずしてスコットランドに行ったと語るな」と言われるほどのソウルフード。日本でいうおにぎりの感

巨大竜「ネッシー」をめぐるネイチャー論文を読む

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「ペストの墓」の遺伝子解析

スコットランドのカークマイケル(Kirkmichael)という村にある、コーチ・インを改造したアパートに滞在した。コーチ・インとは鉄道が普及する以前のイギリスでもっとも一般的だった宿の形態で、隣接する牧場で馬を休ませながら人間も食事や宿をとれる宿のことだ。ただ、人と馬を泊めるだけでは採算が取れなかったことから、現在ではほとんどのコーチ・インはパブになっており、ロンドンでは今でも宿として機能しているコーチ・インはたった1つだという。 おかしな趣味だと思われるかもしれないが、わ

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わたしのリハビリメニュー

3月に右顎の下にできた腫瘍の摘出手術を受けました。 術前の説明では、舌の動きが少し悪くなるかもしれないというだけの話でした。しかし、手術が終わって目覚めると、

米軍製!新型コロナユニバーサルワクチンの簡単解説

コロナウイルスのようなパンデミック傾向のある感染症対策の難所は、ワクチンの効かない新たな変異株が出現し、パンデミックがくり返されることだ。世界では2020年から、全てのコロナウイルスに有効な「ユニバーサルワクチン」の開発が始まっていた。 コロナと同じくパンデミック傾向のあるウイルスにインフルエンザがあり、こちらのユニバーサルワクチンは2009年の新型インフルエンザ流行時に開発が本格化したが、今日に至るまで成功していない。 ところが先週、世界初となる新型コロナのユニバーサル

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ハンブルク麻薬使用室前で男に追われる

2月28日付の記事で、ドイツには「麻薬使用室」と呼ばれる、麻薬常用者が清潔な針と消毒を使って麻薬を使用するための施設があること、また、ハンブルクでは麻薬使用室周辺の治安が悪化しているため、4月から周辺地区の再開発が計画されていることについて書きました。 あれから、再開発は進んでいるのか、麻薬使用者たちはどうなったのかーー。今日は体を張って撮ってきた写真と共に現状をレポートします! 「ドイツのための選択肢」の提案ハンブルク中央駅の北口を出て右手へ曲がると、左前方には長距離バ

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「大麻はお酒より100倍安全」?今なぜ欧米では大麻合法化が進んでいるのか

エイプリルフールではない。4月1日、ドイツでは18歳以上の成人の娯楽用大麻が合法化(非犯罪化)され、1世帯で3株までの大麻の栽培と、1回につき最大25グラムの乾燥大麻の所持(自宅では50グラムまで)が認められるようになった。 「青少年の目に触れない場所で」という趣旨なのだろうが、「9時から20時までは学校やスポーツセンターの近く、『歩行者ゾーン』での使用は禁止」という謎の条件までついており、まるでお酒やタバコのような感覚で大麻が使えるようになった。 欧州に来て驚いたのは、

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世界に誇る日本の医療の「お値段」

先日、日本で腫瘍摘出の手術を受けたことについてはnoteでもお伝えしてきたとおりです。 https://note.com/rikomuranaka/n/nffc45b4c5ba9 いまはリハビリを生活の中心に据えた、本当に地味な日々です。楽しくはありませんが、今まで意識しなくてもできたことができなくなると、色いろな気づきがあって、自分のからだも世界も違って見えますね! さて、先日の入院では退院が週末だったため後日、病院から請求書が来て支払いを済ませました。金額自体はあら

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「パンデミック条約」の現在地

WHO加盟国は4月29日、「パンデミック条約」の最終文言をめぐる話し合いを再開する。5月27日から始まるWHOの第77回年次総会での採択を目指してのことだ。 パンデミック条約とは、世界がパンデミック再発を抑止に努め、次にパンデミックが起きた際に収束に向けて平等にワクチンに配分できるよう協力するための枠組みだ。 条約はワクチン義務とは全くの無関係13日、東京では「ワクチンが任意である日本の主権を無視して、接種を強要するWHOに強く抗議する」「健康を人質にしたWHOの横暴を許

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術後3週間:焦ラズ、落チ込マズが難しい

目覚めるたびに「また良くなっている」と感じられていた症状も、術後2週間を過ぎた頃から急に変化に乏しくなってきました。 

話題の「やせ薬」のパーキンソン病治療薬としての実力やいかに?

日本でも「奇跡のやせ薬」として話題の「セマグルチド」が、今度は早期のパーキンソン病の進行を遅らせる可能性があるという早期の臨床試験データが発表された。パーキンソン病とは脳に進行性の(元に戻らないで悪くなっていく)変性の起きる病気で、震えやこわばり、動作の緩慢、認知症などさまざまな神経症状を示す難病だ。米俳優マイケル・J・フォックスが20代で若年性パーキンソンにかかったことを知っている人もいるだろう。難病情報センターによれば、日本では1000人に1~2人、65歳以上では100人