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ニワトコの花の黒パン

ドイツには夏至の前後の短い間、小さな白い花を咲かせるとびきりステキな木がある。

ニワトコ(Hollunder)だ。

日本で言うと沈丁花のような感じだろうか。甘い香りがして見上げると、小さな白い花の房をつけたニワトコの木が立っている。街路や庭、公園はもちろんのこと運河や湖沿いの森にもニワトコは立ち、可憐な花を咲かせる。

実はこのニワトコの花、レモンを浮かべた砂糖水に浸してやるとお酒になる。仕込み水を常温において3日、しゅわしゅわと泡が立ち始める。5日から1週間くらいしたら中身を濾してワインなどの瓶に詰め、冷蔵庫でさらに発酵を進める。2週間ほどしたら、アルコール度3%ほどの「花のシャンパン」の完成だ。

できたシャンパンを味わうのも楽しいが、花を仕込んだ砂糖水を冷蔵庫に入れるまでも楽しい。この期間は家中が花の甘い香りで満たされ、何が起きるわけでもないが、その辺を妖精でも飛び交っていそうな雰囲気になる。

仕込み中のニワトコのシャンパン

ニワトコの花をしっかりとシャンパンにするための秘訣は「花を洗わないこと」。汚れを落とそうと洗ってしまうと酵母のある花粉が落ち、お酒にならなくなる。小さな虫を目で見て取り除いたらあまり神経質にならず、取り残しは「アルコール消毒」に任せよう。

冷蔵庫に入れる時、「ボトルの蓋は緩く閉める」のもポイントだ。きっちり蓋をしてしまうと、せっかくの花シャンパンが爆発する。

今年はこのニワトコの花シャンパンを使って、さらにパンを作ってみた。
バターと卵をたっぷり入れた黒パンだ。

高温で焼けば花の香りは飛んでしまうと思っていたが、予想を裏切られた。こんがり焼けた外側はほろ苦く、それなのに噛むたびにふわっと、確かに花の香りがするほんのり甘いパンが焼けた。

花と卵が入っているからなのか、黒パンなのにブリオッシュのようで、発酵バターや白はちみつがよくあう。アイスクリームをのせるとまた絶品だ。

黒パンは焼きたても美味しいが、時間が経つとしっとりして風味が増す。ドイツ人の中には、「黒パンは3日以上寝かせてから食べる」という人もいるほどだ。焼きたてが一番と思っている日本人からすると驚くが、ニワトコの花の黒パンも翌日にしっとりして味が丸くなり、でも花の香りはフレッシュなままで、雨の日のニワトコの木を思い出させた。

お酒やパンなどの「発酵モノ」は原理を理解して、手を抜くところと抜けないところを押さえるのが成功の秘訣。

以下、わたしがアレンジしたニワトコの花のシャンパンニワトコの花の黒パンの簡単レシピを載せておきます!

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