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君は酒に殺されかけたことがあるか


はいどうも。

今日はお酒の話をしようと思います。

いま僕はライトな断酒中でありまして、クラブやライヴハウスで挨拶程度に一杯だけ飲むとかはアリだけど、晩酌するとか、居酒屋に行くとか、積極的にアルコールを摂取することはしない。という生活を送っております。

というのも最近まあ色々ありまして、ちょっと前まで毎日けっこうな量の酒をきこしめしていたんですけども、あるときふと『アレ? シラフで時間潰すのが難しくなってるな』『寝る前に酒飲まないと寝れないな』っていう自分に気づきまして、一時的に酒を制限しておるのですよ。

僕は自他共に認めるかなりの依存体質でして、『なくても全然平気だけどあったら楽しいよね』ぐらいのテンションで付き合っていたモノが、すぐに『無かったら楽しくない』とか『無いともうダメ』というふうになってしまうんで、そういう自分のきざしに気づいたらアルコールを中断するようにしています。深刻な依存に陥るまえに距離を置くっていうね。こういう知恵がついたのもホントに最近の話ですけど。


以前、ズブズブのアルコール依存症に陥り、酒が自分に話しかけてくるという幻聴を聴いたという話をしました。



これは26歳のときの話ですが、こんだけ痛い目を見たにも関わらず、29歳のときにもかなりエグいアルコール依存に陥ったんですよ。

26歳のときもなっかなかしんどかったですけど、29歳のときはね、本当に死んでしまうんじゃないかと思いました。アルコールだけじゃなくて、睡眠薬を併用していたので。コレはマジで大変危険な行為です。ジミヘンの命を奪ったのもコレです。大量のワインと睡眠薬を摂取して寝潰れて、ゲロを詰まらせて窒息死したんですよ。ですので、これをいまお読みの方もどうか、どうか真似しないでくださいね。『危ないことは知ってるけど、そうでもしなかったら俺はもうとても正気じゃいられないんだ』という方が多くいらっしゃることも勿論存じておりますが。

きっかけはね、深刻な連続飲酒が始まる前年、28歳のときです。

28歳のとき、立て続けにいろんなことがあったんですよ。

まず、それまでバリバリの朝方生活だったのに夜勤の仕事を始めたのと、小説で新人賞を獲って曲がりなりにもプロの肩書きを得たのと、父が亡くなったのと、大失恋したのと、仕事を辞めたっていうのがぜんぶ、一年足らずのあいだに起きたんですね。

別にどれもよくある話ですけど、それまで僕は毎日のほほんと遊んで暮らすような生活をしてたんで、人生最初の強烈な通過儀礼みたいな感じだったんですね。預金を下ろすみたいに、いろんな出来事が一気にドサッと降りかかってきた。そんで29歳になったころにちょっとおかしくなっちゃったんですね。

まる一年、ホントに何もできなくて一日中ベッドで横になってました。朝起きた瞬間からキツかったんですよ、意識があること自体が。頭の中はずっとドロドロした暗黒が渦巻いてて、比喩とかではなく胸がずっと張り裂けるように痛くて、とにかくずっと苦しかった。ご飯食べるとか歯を磨くとかお風呂に入るとか、もうそういうことすらうまくできなかったですね。激痛をシラフでマトモに受け止めるのが怖くて怖くて仕方なくて、とにかくずっと酒を飲んでました。

業務用ウィスキーの4リットルボトルを買って、グラスに注ぎもせずにそれに口つけてそのまま飲む。

それでベロベロになって、半ば気絶するように寝て、起きたらまた飲むの繰り返し。そんとき実家にいたんですけど、普通に働くどころか、人間の生活ができなかったんで、見かねた母親に精神科に連れていかれました。

ほいで向精神薬と睡眠薬を処方されて、お医者さんに『お酒は絶対にやめてくださいね』って何回も言われましたけど、『飲まなかったら死ぬんだから仕方ないだろ』って思ってました。

そこからはつねに、睡眠薬と抗精神薬をウィスキーで流し込んでました。

朝も昼も夜も。

意識がモーローとした状態じゃないと苦しくて苦しくて、普通に歩くっていうことすらもうできなくなってました。それでもやっぱり苦しかったんですけど。

あんまり大きい声じゃ言えないですけど、ODとかも頻繁にやってましたね。それで七転八倒の苦しみを味わうってのも一度や二度じゃなかったです。

毎週通院していた精神科も、すべて母親に運転してもらっていました。シラフの時間が一秒たりともなかったんで。

友達とはちょこちょこ会ったりとかしてたし、それこそライヴ出たりもしてましたけど、常にベロベロでグシャグシャの状態でした。友達と会って普通にしゃべってるときでも寝落ちしちゃうとかよくありました。どんだけバカ笑いしてても、頭の片隅にはずっと『もう死んじゃおうかな』っていう希死念慮が渦巻いてました。

夜明けまでずっと川を見つめてて、心配した友達が探しに来たこととかありますね。

『酒飲まなきゃ死ぬから』とかいって飲んでるくせに、一日中死ぬことしか考えられないっていうハッキリと矛盾した状態でしたが、希死念慮っていうのはそういうものですよね。

よく自殺した人に対して『何も死ぬことはない』とか正論を吐く人がいますけど、自ら命を絶つっていうのは基本的にその人の中のなにかが壊れたり、狂ってしまったから起きることなんで、言葉は悪いですけどそもそもお門違いなんですよ。

正気の人の正論が響くわけないです。

なぜなら壊れてしまっているので。

そういう判断ができないから自死という選択をするわけです。

話が少々スリップしましたが、ホントにひどかったのは29歳の前半ですね。

僕、23歳の頃から毎日日記つけてるんですけど、29歳のときだけ半年ぶん、まったく記述がないんですよ。

他の年はどこそこ行って何してアレ食ってうまかった、みたいなことが毎日ビッシリ書かれてるのに、そこだけキレーに真っ白なんです。最初のアルコール依存に陥ったときですらちゃんと毎日書いてたのに。

もうとにかくしんどくて、自分の身に起こったことを文章にして再認識するっていうことすらイヤだったんですね。

毎晩、抗精神薬と睡眠薬とウィスキーを大量に摂取して何とか布団に潜り込むんだけど、それでも二〜三時間ですぐ目が覚めちゃって、あと夜明けまでずっと眠れないとかよくありました。

そういうクスリとかアルコールのはたらきによって無理やり眠るっていう生活を続けてると、寝方を忘れるんですよ。目を閉じて横になってたら自然に眠っちゃうっていうプロセスがわからなくなるの。

で、不眠っていうのは本当に心身に大変なダメージを与えます。

それに加えて、起きてる時間がずっとしんどいから少しでも意識を失っていたいっていう状況がありますから、寝たい寝たい寝なきゃ寝なきゃって思って、どんどんどんどん酒とかクスリを追加していく。もうほとんど廃人みたいな状態でした。一番ひどいころはずっとヨダレ垂らしてて、ウンコとかオシッコも漏らしまくってましたね。

精神科に入院する直前までいったこともあります。

入院の手続きして、荷物とかも全部持って病院行ったんだけど、入院病棟がPCの持ち込み禁止だったんで、それは無理だなって思って直前で取りやめたんですよ。小説を書く仕事をしていたので、それさえも奪われたら本当にすべてゼロになってしまうと思って。

で、そっからどう立ち直ったかっていうと、具体的なきっかけっていうのは多分なかったです。

これはあくまで僕の考えですけども。何か天啓のようなことがあって、その瞬間から全てがいい方向にガラッと変わる。みたいなのは人生においてほぼほぼないです。

筋トレとかダイエットと同じで、毎日毎日ちょっとずつ取り組んで、うまくいったりダメだったりを繰り返しながら、少しずついい方向に進んでいくというのしかないんですよ。

一発で大逆転しようっていうのはジャンキーの思想です。

注射を一発打って、そんで気分爽快になろうというのはね。

いま何か問題があって、毎日毎日ものすごく辛くて苦しくてもう死んじゃいたいんだっていう人に何か僕から言えることがあるとすればですね、『とにかく歯を食いしばって時間の経過を待ってみませんか』しかないです。

本当に苦しいときにそんなこと言われてもマジでムカつくだけなんですけど、それはすげえ、すっげえよくわかるんですけど、でも最終的にはそれしかないんです。

時間が解決するなんていう言い方がありますが、それとはちょっと違くて、時間が問題を解決するってことは実はあんまりないと思います。

ただ、問題が問題じゃなくなったり、何かあきらめがついて問題を問題のまま手放せるっていうことがあります。

諸行無常という言葉がある通り、この世はすべて常に変化し続けています。何一つ変わらないものなんてないんです。揺り動かすことすらできない、巨大で強靭なものでも、時間が経過するとともに変わっていくんです。

もうとにかくしんどくて、打つ手は何もないっていうときは、とにかくひたすら待つしかないんですよ。

ひたすら辛抱強く待ち続けるしかないということが、人生にはあるのです。たぶん。

ただ、これは僕のケース、あくまで僕のケースなんで汎用性は著しく低いと思いますし、『適当なことを抜かすな、エビデンスを出せ!』とかいわれてもそういうのは全くないんですけど、僕がそういうピュア・ヘルな状況から脱するのに何が功を奏したかって聞かれたら、グルメ漫画でしょうね。

マジでこのころ、めちゃくちゃグルメ漫画読みました。

もちろん『そんなん楽しめるワケねーだろ!』っていう意見も重々承知です。マジでしんどいときって、大好きだったはずの映画や音楽に触れても一切感動しなくなって、そんな自分に愕然としたり絶望したりします。

僕も『一冊の本を読んだら力が湧いてきた』とか『ラジオから流れてきた一曲に救われた』とか、そういう一発で全ての問題が解決する天啓みたいなことは別になかったです。

ただ、まんじりと眠れぬ夜を過ごすとき、グルメ漫画は時間の経過を待つのにうってつけだったんですね。

それも、ホントーにくだらない、ツッコミどころ満載のグルメ漫画がよかったです。

正義の料理人である主人公が、トンデモなアイデア料理で、悪い寿司屋とか悪いラーメン屋を成敗するみたいなヤツ。

しんどいときっていうのは『ちゃんと意味がある』っていうこと自体がもうめちゃくちゃキツかったりするんですけど、そういういい意味でしょーもないヤツっていうのは意外に読めたんですよ。

『おもしれー!』って熱狂するワケでもなく、ただ淡々と読めたんですね。

面白すぎなかったからこそ、ただひたすらに埋没することができた。

圧倒的にちょうどよかった。

とにかく読んでいて苦しくなかった。

あとこれは完全な後付けですけど、グルメ漫画である以上、当然それは『食』を描くワケで、つまり生の欲求を刺激する一因になります。

グルメ漫画って基本的に前向きなんですよ。

それも押し付けがましい啓発とかじゃなくて、ただやんわりと、ゆるやかに、静かに、生きること自体を肯定してくれる。

そういうポジティヴネスが無意識下でうまいこと働いて、ちょっとずつちょっとずつ自分を持ち上げてくれたんじゃないかなぁと思いますね。あくまで僕個人のケースですけど。

ですので、何度も繰り返すようにこれはあくまで僕の経験のみによる、ごくごく汎用性の低いアドヴァイスですが、もしあなたが毎日しんどくて、とにかく生きていること自体が辛いというのであれば、グルメ漫画を読んでみるというのはいかがでしょうか。

何も本屋に行ってフィジカルを購入したりしなくとも、今は各種電子書籍サイトで、○○巻まで無料! みたいなのが完全オフィシャルの完全リーガルでいっぱいありますから。そういうのを駆使して、ベッドに横になりながらでいいので、グルメ漫画を読んでみてください。

あとソウル・ミュージックですね。

これこそ『ふざけたこと言ってんじゃねえ。エビデンス出せよ』って言われると思うのですが、僕はソウル・ミュージックを聴くのは心身に良いと信じています。ほとんど狂信者といっていいと思います。

ですので、これは狂信者のたわごととして聞き流して欲しいのですが、僕はメンタルヘルスに携わる医師やカウンセラーが、患者にソウル・ミュージックの鑑賞を勧めないのか不思議で仕方ありません。

『投薬もカウンセリングもいらねえ。ソウル聴いてりゃ躁鬱も統合失調症も治るんだよ』などというマッチョめいたことを言っているのではありません。僕とて、投薬やカウンセリングや友人らのサポートがなければとうてい立ち直ることはできなかったでしょう。ただ、それだけではきっと足りなかったと思います。あくまで僕の場合ですが。

もしソウル・ミュージックがなければ、僕は本当に廃人になっていたか、自殺していたでしょう。

ソウル・ミュージックがあったから、どうにかここまでやってこれたんです。なんとか生き延びることができたんです。

ソウル・ミュージックはすべての物事を良い方向に持っていくパワーがあると、僕は本気の本気で信じています。

なーんて、アルコール依存の話をしていたつもりが、いつのまにやらしょっぱい人生論みたいになってしまいましたが(笑)、とにかくそういう様々な力を借りて、僕は30歳の夏に、ようやくズブズブのアルコール依存から脱することができました。

一年以上にわたるこの生活の後遺症は凄まじくて、いまだに僕の脳は28歳のころの八割ぐらいしか稼働していない感があります。

ただでさえ頭悪いのに。

けれども、傷つくことでしか獲得できない知恵があると思います。というかそう思わなかったらやってらんないです。少なくとも僕はそう思わなきゃ、人生を肯定することなんかできないです。

人間は変われません。そう簡単には。

そんだけ痛い目を見たにも関わらず、僕はいまだに酒を完全にやめていませんし、いまもちょっと飲みたくなってます。さっきローソンに行ったときも、黒霧島を買うか買わないかで五分悩みました。でも今日はがんばってどうにか飲まないでいようと思います。

人間は変われません。そう簡単には。

でもちょっと立ち止まって考えることはできる。

そう信じて、僕は一日一日を暮らしております。


つーワケでそろそろ筆を置かせていただきますが、これは一応音楽記事に特化したnoteでございますので、最後に一曲だけ紹介しますね。

フランスのディスコ・グループの一曲です。

リリースが1977年。

どうしようもなく暑苦しくて、うざったいぐらいアッパーで、笑っちゃうほど押し付けがましくて、すげえ元気が出る曲です。

僕はこういう音楽に一曲でも多く出会いたくて、音楽を聴き続けています。

それではまた。





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