上手く失敗すればコミュニケーションは成功する?をJames Fridmanと考えてみた
真顔でおかしなことを世間に投げかけられる人というのは見ていて清々しい。James Fridmanもその一人で依頼者の無茶なお願いに対し、"忠実に"問題解決をするという世界的に有名なPhotoshopの天才である。今日も、彼のユーモアを見るために、世界中から多くの人々が彼のもとへと足を運ぶ。僕もそんな一人で、たまにJamesのinstagramやtwitterを覗きにいっちゃうのだ。
そういった息抜きのとき、ふと変な考えが浮かぶ。
それは、
コミュニケーションが実は勘違いからできていると認めれば、逆にコミュニケーションが上手くなるのではないか
ということ。
今日は、このことについて、世界が認めるPhotoshopの天才James Fridmanのセンス溢れる勘違いを紹介しながら考えてみようと思います。
1. James Fridmanの勘違い
1.1 程度を読み間違える
「私とカメラがとっても遠いので直してくれませんか?」
「りょうかい!」
「滝をもっと大きくするか、近づけてくれませんか?」
「大きく、近くしてみたよ」
1.2 額面どおりに受け取ってしまう
「わたしをこの木の中にいるようにしてくれないかしら?」
「完了!」
「この背景から人を削除してくれる?」
「仕上がった!」
1.3 比較関係をミスる
「彼と同じくらいの身長にしてくれないかしら?」
「もちろんさ」
「ドレスをちょっと長くしていただけないでしょうか?私にはちょっと短すぎて。」
「どうぞ、誰が着てるのか探してみてね」
1.4 言葉のあや
「彼氏がモハメド・アリの大ファンなの。よかったら彼をボクサーにしてくれない?」
「はいよ」
1.4 相手のゴールを見失う
「顔を丸くないようにしてください!」
「OK...」
「手持ち無沙汰なので、ポールを持ってる感じにできませんか?」
「どうぞ」
「俺を悪い奴風にできる?」
*サングラス厳禁。
*おかしなバッグ厳禁。
*タトゥー厳禁。
*口髭厳禁。
James 「警察が今、君のもとへ向かっている。」
1.5 余計なことをしてしまう
「僕のお姉ちゃんの中指を立てないようにしてくれるかい?ありがとう!」
「おっけ」
1.6 想像が斜め上を行く
「僕がこのあひると戦っている感じにしてくれないか?」
「1:0でアヒルの勝ちです」
「ティーを加えているのが僕なんだけど、友達がショット打ったように見みせられる?」
「間違いなくこうなるよ」
「背景にいる水やりをしている人を消してくれないかしら?」
「うん!」
1.7 信念を曲げない
「私、自分の体重がずっとコンプレックスで、、、スポーツをしたり、健康的な食事をしたり、運動したり、薬も飲んだの。すべてやったわ、、それでも私はいまだに太ってる。お願い、一度でいいから私を痩せさせてくれないかしら。それが私の1番の願い、、私はただ、もし私が可愛かったらどんなだろうって見てみたいだけなんだ!」
James「痩せていると可愛いはイコールじゃない。体重を減らそうとして苦しんで、あなたの人生の楽しみを見失ってはいけないよ。活動的で、健康的で、そして幸せでいてください。今のあなたのように。」
2. James Fridmanからコミュニケーションへ
このコンテンツの仕組みはずっとこんな感じだ。
1. クライアントがJamesにお願いをする。
2. Jamesが勘違いをする。
3. 「えっ、思ってたんとちゃう。」
ふと、あっ!っと気づく。これ、日常のコミュニケーションに似てる。
「ーってこと?」
「あー違う違う笑。こういうこと。」
「ほうほう、つまりーってこと?」
「うん、あーちょっと違う。」
「こういうこと?」
「んーまあそんな感じ。」(ちょっと違うけど、まあいいか)」
というやりとりがコミュニケーションだから、、、つまり、コミュニケーションが上手くいくというのは、
勘違いする、確認する、修正するというループ
を無数に繰り返し、最終的に破綻しないように、関係が崩壊しないように、被害がでないように当事者達の許容範囲まで押さえ込むという作業ということになる。
そう考えると、コミュニケーションの本質は意見の一致や理解ではなく、そこそこましな勘違いを探すということに、、上で紹介しただけでも8つの勘違いパターンがあって、さらに、文化的、言語的、人種的、性別的、時代的な違いもあるんだから、世界平和はそんなに簡単じゃない。お互いのイメージがある程度接近したときの方がすごいことなんだ。
3. 勘違いと創造力
ここで不思議なのは、Jamesが示した通り、被害が当事者にとって許容範囲だったり他人事であれば、とんでもなく勘違いした方が逆にクリエイティブになる、エピソードトークになる、そして、広く愛されるということ。
まるで、クラスのおっちょこちょいがみんなから愛されるムードメーカーになるように。アンジャッシュが勘違いコントで一世を風靡したように。旅先の現地人との会話が失敗しても、それが人生を変える大きな学びになるように。
そうすると、許容範囲内であれば、聞き手側であれば、積極的に勘違いを繰り出した方がいいし、逆に話し手であれば、相違点に着目して勘違いを拾いに行った方が話が盛り上がる。
4. 勘違い貯金とリスクマネージメント
ここで問題はじゃあ、どう被害を押さえ込むのってこと。考え抜いた結果、今のところの結論はこんな感じ。
一旦、勘違いの重要性に気づくと、普通の会話で小さな逸脱を意識して拾ってストックしておくことができる。すると、この勘違い経験の多さに比例して、お互いのイメージのズレを発見したり予測するセンスが磨かれる。その結果、正確に伝えたり、正確に聞き取ったりできるようになり、リスクマネージメントができて、勘違い上手こそコミュニケーション上手という変な構図が生まれる。
このように、伝わらないことのコインの裏面には必ずクリエイティブやユーモアが隠れていると思えば、「なんで伝わらないかなあ!!もう!何考えてんのよ!」とか「あの人、こう言ってたじゃない!!こう言う意味じゃないの!」というイライラが不満がほんの少しだけと消えて、「どこで分岐したんだろ?」というところを寛容さをもって探しにいけそうだ。そうすると、相手の考えや個性への好奇心をもって、コメディやユーモアを発見することができるかもしれない。
5. まとめ
結局は、
正確に伝えて論破し自分の考えを相手のマインドにできるだけコピーする
という考え方よりも、
自分の言葉から、相手の言葉から、
どういう勘違いが創造できてどのくらい許せるか
と言う風に考えた方が、創造的で、ユーモアがあって、なにより平和的。
なんたって、コミュニケーション力という、計測不可能な、よくわからない基準で互いに削り合わなくていい。
これを言い換えると、創造的かつ生産的なコミュニケーションは、
1. 限られた時間中で最終的に許容範囲内に間に合うよう適宜修正しながら(リスクマネージメント)、
2.積極的に勘違いを繰り出すまたは発見することで、より多くのクリエイティブコインを稼ぎつつ(創造的思考と勘違い貯金)、
3. 一緒に合意点付近を目指したり合意点自体を近づける
という、
スーパーマリオブラザーズみたいなプロセス
ということで自分の中で腹落ちした。
(嵐ファンなら、VS嵐のクリフクライムのイメージがいいのかも!)
とは言いつつも、現実はそんなに甘くない。
伝えるには表現力が必要なのは間違いないし、このやり方が通用しないことばかりなのは確かだ。
それでも、自分の中では、コミュニケーションの本質は失敗だという前提に立てば、いつだって0からスタートすることができる。だって、結局、何をしたってプラスなんだもの。マイナスにならない。小さく気をつけながら失敗を繰り返していれば、経験と創造性とリスク回避能力が増えて全部加点。上手くいけば、それはそれで相手に感謝して一緒に万歳できそう。そんな気楽な感じでいいんじゃないかしらと思う。
6. 余談
最近、そんなことを考えていると、身の回りに小さな無数のエンタメが転がっていることに気づく。
例えば、今週末、僕らは登山にいく予定だった。だけど、秋の紅葉シーズンも相まって、バスが予約できなかった。そこで、公園でピクニックをしましょうということになった。
このやり取りの中で、僕の友人の一人から、「じゃあ、うちにキャンプグッズがあるからもっていくね」というLINEが来た。ピクニックだと言っているのに、なんということ。たぶん彼女の中では登山のイメージがまだぬぐい切れていない。今週末、彼女はピクニックをするためにキャンプグッズを持って市立公園に参上する。けど、それはそれで楽しそうだから、とりあえず修正しないでおこうと思う。
彼女は、確かに、コミュニケーションに失敗した。けど、僕にとっては大切なクリエイターでありエンターテイナーなんだ。
寄り道用のnote
ためになる関連note
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