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『チ。地球の運動について』について

(※若干ネタバレに繋がる表現があります。)

初夏のある日、私は本屋で雑誌の立ち読みをしていました。
その時読んでいたのが、ブルータスの漫画特集。

その最初の方で紹介されていたのが、今回取り上げる『チ。』でした。
インパクトのあるタイトル。
そして内容は「中世 × 天文学」となれば、読まない手はない、ということで、
電子コミックサイトで1巻の試し読みをしたところ、
一気に引き込まれてしまいまして、
コミックで一気買いの一気読みをさせていただきました。

本作『チ。 地球の運動について』の舞台のモデルは中世。
当時、地球を中心とした天動説がスタンダードとされ、
それ以外の考えは「異端」とされ排除されていた時代。
ガリレオが宗教裁判で言った「それでも地球は動く。」
あれを知った時、当時少年だった自分は偉く痺れたものです。
(本当は言っていない説あり)
”異端”と言われようが「真理」を求めて惑わない姿勢。
カッコ良すぎる。

『チ。』の世界は我々の生きる世界とはパラレルな存在にも思えるし、繋がっているようにも思える。同じように天動説が強く信じられ、地動説を唱えようものなら”異端”として処刑されてしまう世界。
でも「真理」を求める力は何よりも強い。

全3章+エクストラで全8巻。
ONE PIECEが100巻を超え、
キングダムもいつの間にか60巻を超えてなお、
まだ結末が見えないそんな状況の中、
8巻で締まるこの作品のなんと潔いことか。
そして締まりの良いことか。

各章で時代が移り変わり、主人公に位置する人物も変わります。

「真理」を求め、「知」を託し、決して「惑わず」に繋いだ主人公たち。

それぞれの口から発せられる言葉や行動には、心が揺さぶられました。
第1章の主人公ラファウは、命に代えてでも真理を求め感動を生き残らすことを「愛」と言い、
第2章のオクジーは託すことを現状を前に向かわせる希望と言い、
この言葉に心を動かされたバデーニも、やはりその命に代えて「感動」を後世に託した。
そして第3章のドゥラカは人間の「知」の力を信じ、最後のバトンを渡す。
第3章のラストは、なんとも言えず、とんでもなく感動的でした。

3章までで放心状態の中迎えるエクストラで、「知」と繋いだ物語は完結しますが、
その締め方、自分は結構好きでした。

程よい量感、そして素晴らしい締め方でしたが、
ただ個人的には第1章が盛り上がりの最高潮だったかなと。
そこから章を追うごとに、なんとなく真理を追う「ピュアさ」が、
時と人を経て薄まってしまったのか、
その盛り上がりの熱量が少し下がってしまったように感じました。

あとはまぁ、少しルビがやかましかったかな。笑

電子版でも読めますが、コミックをオススメします。
「チ」に込められた意味が分かるシーンの感動は、
きっとコミックでページをめくることで、より深く味わえるような気がするので。
是非。


さて宇宙ものと言えば、少し話は逸れますが、
自分の中では『プラネテス』が傑作かなと思います。

『チ。』が15世紀くらいの話で、『プラネテス』はそこから600年後くらいの話。
『チ。』では宇宙の真理を求めて惑わずに進む人間が、600年後には宇宙に進出。
でもその広大な宇宙を前に人間は「惑う」
惑いながら、迷いながら、「愛」を知って強くなっていく、っていう話です。

プラネテス=惑う人(これが惑星=プラネットの語源になっているということが、
たまたま『チ。』の中でも触れられている)

なんかその対比がすごく面白いなーと思い、引っ張り出して読んでみましたが、相変わらず面白い。
間違いないです。
こちらもご興味があれば是非。
両方合わせても12巻。気軽に手が出せるかと。
(だってONE PIECEは100巻超えてるんだぜ。。)

最後にまた『チ。』に戻ります。
自分がこの作品でたまらんなーっていうところが、
人々が地球と宇宙の美しさに気づいてしまうところ。
当時の常識で言うとそんなことを考えてしまうこと自体が禁忌なのに、
それでも真理を求めていくと突き当たってしまう事実。
宇宙は、地球は、この世界は美しいということ。
最低で、汚くて、不完全でなければいけないのに。

「この世は、最低というには魅力的すぎる。」


『チ。地球の運動について』

『プラネテス』

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