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行き届かない高齢者への足爪のケア

山間部への片道約2時間掛けての2ヶ月に1回のフットケアの訪問を初めて約3年が経ちます。フットケアサロン、訪問看護ステーションは無く、唯一ある医療機関では巻き爪や肥厚した爪を切って整えることはしてもらえないという限られている社会資源と人材。これは日本の各地に同じような現状はあるのではないかと私の中で課題視を始めました。


私が訪問によるフットケアを始めた理由はエスカレーター又は階段を使うしか来店する方法がないフットケアサロンに勤めていた際に車椅子にて来店する方がいらして付き添いの方も大変な様子が見受けられ、だったらフットケアサロンの無い地域に住む高齢者や障害のある方に向けて身近にフットケアを受けられる環境を創ろうと想ったからです。店舗型のメリットもあるのも重々分かってはいますが今は訪問に拘っている自分がいます。

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介護保険サービスを利用していても肥厚爪や巻爪の爪切りは看護師さんも看護学校にて足爪を整える実技はしてこなかったということで切ることができないといったこともあります。介護福祉士の養成過程においても正しい足の爪の切り方の実技まで学ばれてこない方のほうが割合として大半を占めているではないでしょうか?切ってあげたいけれども切ってあげることができないというジレンマと闘っている介護士さん、看護師さんも多いのだと推測します。そして伸ばしておくしか他ならない肥厚爪や巻爪のある高齢者が潜んでいるのだと思います。 


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医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条によると介護士は「爪そのものに異常がなく爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること」は行えるとあります。

爪そのものに『異常』?がなく

「爪そのものに異常がなく」ここで指している『異常』が何を指し示しているのかが明確化されていないことがひとつ気になる点です。おそらく肥厚爪や巻爪も該当するのでしょう。肥厚爪の原因のひとつとして爪白癬があります。60歳以上の高齢者の約4割が爪白癬に罹っているという米国のデータがあります。私はこれまで3箇所の特別養護老人ホームで勤務してきましたが爪白癬疑いの肥厚爪がある方は多くいらっしゃいましたし巻爪の方もおりました。


Qなぜ肥厚爪を切ることができないのか?

爪が厚く普通の爪切りで爪を挟むには厚みがあり過ぎて自分或いは介護をする方が爪を切ることができなくなる。私の場合、専用の機械にて爪の厚みを取り除くことで漸く爪の長さや形を爪切りやネイル用ニッパーにて爪を切ることができるようになります。爪用ヤスリを使用することでも厚みを取り除くことは可能だとは思いますが厚みにもよりますが相当な時間を要することになるでしょう。


Qなぜ肥厚爪を伸ばしたままにしておくといけないのか?

・爪に厚みがでることで靴下やタオルケットなどに引っ掛かりやすい。それは爪が欠けたり剥がれることにも繋がってしまう恐れがある。爪が剥がれることで痛みを伴うこともあり、足爪が果たす機能が弱まる。歩行や立ち上がり動作にも影響を及ぼし兼ねない。

・靴がきつくなりサイズが合わなくなる。

・見た目が悪く女性の中には気にして気持ちや意欲が低下してしまう方もいる。

・横に肥厚した爪が伸びた場合は、隣のゆびの皮膚に爪が当たり、靴を履いたり歩行することで更に皮膚を圧迫させ傷ができやすくなったり出血することもある。歩行ができる方にとっては歩くたびに爪が皮膚にあたり痛みを伴ったり歩き難さにも影響することがある。中には肥厚した爪が原因で歩き難くなり車椅子を使用していた高齢者もいた。疾病により言葉で伝えられない人もいるため周囲の人が痛みなどに気付くことが遅れることがある。

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↓ ゆび先に爪が食い込んでいた跡がお分かりになるかと思います。

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<足先を覆うほど爪が伸びた場合>

本来、その方がもつ足のゆびの機能を最大限に活かすことができず、立ち上がりや歩行がし難くなり不安定な動作に繋がり兼ねない。ゆび裏まで肥厚爪が伸びた場合は動作をする度に痛みを伴うことでしょう。


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Qなぜ巻き爪を切ることができないのか?

巻き爪の程度にもよりますが家庭用の爪切りだとカーブに刃先を合わせて切ることが難しい場合が多いのです。私はネイル用ニッパーを使用したほうが巻き爪は切りやすくなります。

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Qなぜ巻爪をそのままにしていてはいけないのか?

・爪が皮膚に食い込み違和感や痛みを伴う場合もあり歩き難さ、不安定な歩行、歩行を控えるなどといったことが起きる方もいらっしゃいます。

・爪下に角質などが溜まったままとなり不衛生な状態になります。

・肥厚爪同様、伸ばした状態にしておくことで靴のサイズが合わなくなったり靴下などに爪が引っ掛かりやすいといったことも起こりやすくなります。

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高齢者の声

訪問している高齢者からは「諦めていた」「我慢していた」という声を聞くことがあります。「この足の爪切りをしてくれる人なんていないと思っていた」と。

医療機関を受診したことがあるという方からの情報になってしましますが

・肥厚爪の爪切りはされずに帰ってきた。

・爪を剥がされた。それ以来爪切りが怖くなった

ということもあったそうです。


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(肥厚していた爪がかの拍子で捲れ上がってしまったという足爪。)


どうしたら足の爪ケアが行き届くのか?

・施設サービスや在宅サービスを利用している高齢者には看護師や介護士も爪切りの知識や技術の習得ができることで、高齢者の自立を支援することや個人の有する機能、能力を最大限に活かすこと。そして高齢者の笑顔にも繋がるのではないかと個人的に思うのです。どこの地域にも介護事業所はあるわけですから。そのためには、法の整備なりが必要になってくるのかもしれません。出会う専門職の方からは「介護士は巻爪や肥厚爪(マッサージも)の爪切りができない法律があるから」とそれ以上話が続けることができずに遮断されてしまうこともあります。介護福祉士という国家資格と法の縛りというものに囚わざる終えないのです。フットケアの必要性と介護士ができる範囲内でのフットケアを地道に伝え続け、そして広めていくことなのでしょう。

・介護保険サービスを利用していない方にケアが行き届くようにするにはフットケアセラピストなりを各地に増やしていくことなのかもしれないと私の中で想っていることです。


私が全国各地に暮らしている足の爪で悩みのある高齢者に向けてできることは、介護事業所様の介護士さん、看護師さんに向けて。そして初任者研修受講修了者や介護士を離職した方、ネイルケアやフットケアに興味のある若い世代などにもアプローチをした高齢者への足の爪切りなどのフットケアができる人材(介護のことも学びつつ)の養成なのだと想うのです。

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